子狐、求婚される。 ページ30
酔い潰れたAは衆合地獄の事務所のソファの上で目を覚ました。
目元に置かれた冷やしタオルをずらし、まだ夢うつつの状態でボンヤリと天井を眺める。
｢あ……私負けたんだ｣
｢あの勝負は無効ですよ。皆さんにも伝えてます｣
隣から聞こえた声に横を向くと鬼灯が傍で椅子に座ってお茶を飲んでいた。
｢無効って…｣
｢元々私が勝ったら無効にするつもりでした。
人生の大切な選択を飲み比べ勝負なんかで決めるものじゃないですし｣
鬼灯の大きな手が冷やしタオルを退かせてAの額を撫でる。
｢これに懲りたら色々な方と飲み比べ勝負なんてするのを止めなさい｣
｢あれは勝負仕掛けられたら勝手に周りが盛り上がって断れなくなるんです。
まあ、私もハンデでテキーラ呑んだりしてたんですけどね｣
｢貴女途中から楽しみだしてるじゃないですか。
飲み比べ勝負に勝ったら貴女を自分の女にできるって聞いて張り切っていた方もいるらしいですが？｣
｢それも、負けたら自分の女になれって言っていた人を負かしたら次からそんな話になってしまって…｣
今でも額を撫でる鬼灯を見上げ、ダメ元で気になっている事を聞いてみる。
｢私はいつ鬼灯様と結婚の約束をしたんですか？｣
｢自分で思い出しなさい｣
バッサリと切り捨てられ、｢せめてヒント下さい！｣と食い下がった。
｢仕方ないですね。貴女が2段階前の時ですよ｣
｢私が子供の時じゃないですか！
大抵の大人が本気にしないですよ｣
｢私もあの時はその場だけというか、貴女が成長した時には気が変わっているだろうと思っていました。
あの白豚に勝てた気がして悪い気もしなかったですし｣
白澤への妙なライバル視にいつもの事ながらAは苦笑いを浮かべた。
｢昔の面影が残る反面、大人っぽくなった貴女と過ごしている時に
夫婦になればこんな感じなのだろうかと柄にもなく考えてた時もありました。
Aさんが思ってるよりも私はAさんとこれからを共にしたいと真剣に考えていますよ｣
Aは恥ずかしさで身体にかけられていた毛布で真っ赤になった顔を隠す。
椅子から降りた鬼灯は床に膝をついてAの頭の位置の近くに屈んで自分の目線も合わせた。
｢Aさん、私と夫婦になってくれませんか｣
毛布の中から、小さくか細い声で
｢はい……｣
と返事が聞こえた。
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鈴(プロフ) - とーとばっくさん» 読んでいただき、ありがとうございます。自分のペースで更新頑張りたいと思います。 (2020年7月20日 15時) (
レス) id: b29c9bf4f3 (このIDを非表示/違反報告)
とーとばっく - とても面白かったです!これからも無理のない程度に更新頑張ってください!応援してます! (2020年7月20日 6時) (レス) id: 10c7904400 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：十五
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時：2020年7月2日 3時
