怖くて ページ7
「出力最大! 対象の体内エネルギー上昇を確認! 出力低下させます」
先ほどの研究員が、パソコンをいじりながら報告した。
「いや、このままで」
フラダリさんは表情一つ変えずに、続行の意を表した。
「しかし、このままだと対象が自滅する可能性が高く……」
研究員の問いに、無言で答えたフラダリさん。
「……実験続行。対象のエネルギーが最大になるまで続けます!」
カプセルの中のハリマロンはとても苦しそうで、辛そうで。
自分で自分の力が制御できないのだろう。激しく波立った液体の中、じたばたもがいているハリマロンは見るに堪えなかった。
実験とやらを続行するフラダリさんに怒りがこみあげてきて、「やめて」と叫びたくて。
でも、勇気がなかった。
もしかしたら、私が邪魔したなら、マノンちゃんとアランまでここにいられなくなってしまうのではないか。そう思ったら、行動するのが怖くて。
ハリマロンを助けたい。マノンちゃんの大切なパートナーを苦しめたくない。
でも、そのためにマノンちゃんを不完全な状態で外に追い出してしまうなら……。
自分の中に渦巻く相反する二つの欲望が私を悩ませた。
私が悩んでいる間にも、ハリマロンは苦しそうにもがいていて。
その姿を見たくなくて、こっそり、速やかにその部屋から抜け出した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
何も考えず、ただただ全力で廊下を走り抜ける。
息が荒い。目の前の風景がもやがかかったようになってきた。
酸素不足。そんなの気にならなかった。
ただ、私が見た衝撃的な光景を忘れたくて。あれは悪夢だったと思い込みたくて。
脳裏にこびりつく、ハリマロンの苦しそうな表情と、フラダリさんの怖いほど無感情の表情。
振り払おうと、必死に走る。
「うわっ!!?」
ふと飛び出してきた人影を一瞬で認識することは不可能で、勢いよくぶつかってしまった。
「っ!!?」
反動で、盛大にしりもちをついた私。叩きつけられた体が悲鳴を上げている。
「大丈夫か!?」
「うぅ……」
痛みに耐えながら、顔を前に向ける。アランの顔がすぐ近くにあった。
どうやら、私はアランとぶつかったらしい。
「大丈夫です……。ごめんなさい」
「お前、どうしてそんなに急いでたんだ?」
自分でもわからない。
「それと、今までどこ行ってたんだ?」
「あぅ……」
何を言っていいのか、何を隠したほうがいいのか、わからない。
「アランー?」
開かれたままの扉の先から、無邪気な声が聞こえる。
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エビピラフ - すごくすっごく面白いです!!それに、キュンキュンしますね〜。これからも更新頑張って下さい!!! (2016年8月8日 1時) (レス) id: 44e702c603 (このIDを非表示/違反報告)
リオン(プロフ) - カレーオムライス…とてもおいしそ〜とても食べたくなってきました! (2016年8月6日 11時) (レス) id: 6bba43ef19 (このIDを非表示/違反報告)
瑠美 - 良かった。アランは、主人公に薬を飲ませなかった。安心しました。((o(^∇^)o)) (2016年8月4日 5時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
瑠美 - 駄目。飲んじゃ駄目。その薬を飲んでしまたら、主人公は、壊れてしまう。アラン止めて。 (2016年8月2日 20時) (レス) id: eec2ec89e1 (このIDを非表示/違反報告)
頂志桜(サム)(プロフ) - 黒乙女ありすさん» コメントありがとうございます! 主人公の考えとしては、『本当に美味しいカレーなら、飽きなんてこない』ってことなので、3日連続でも彼女にとってはむしろご褒美です(笑) (2016年8月1日 19時) (レス) id: f46217bc92 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:頂志桜 | 作成日時:2016年7月20日 7時