9*:少年の戸惑い ページ10
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「和馬くーん！」
しらない女子の声が甘ったるく呼んでくる。
え、と思いながら振り返ると三、四人ばかりの
女子がキラキラした目で俺に駆け寄ってきていた。
逃げる暇もなく囲まれる。
この人たち誰だ…。
「和馬君！私すごくファンなんです！」
「へ、へえ…」
「サインくれませんか？！」
「ツーショットお願いいたします！」
「握手してください！！」
「ええぇ…」
畳み掛けるような注文に戸惑う俺。
朝から何事だよまったく。
あ、向こうに蓮巳先輩がいる。
助けて先輩…！！！
しかし先輩はこちらを見ることもなく
校門に入っていった。
「和馬君和馬君！」
「〜〜〜〜っごめん！」
グイグイ袖を引っ張られた手を
振り払い校門に走っていく。
アイドル科の校門には特別に警備員が
待機していて、生徒手帳で確認しないと入れない。
振り返ると女子達が俺の姿をパシャパシャ連写していた。
恐るべし…！！
「和馬ー！」
「ぎゃぁぁ！！！…て、明星かよ」
下駄箱の影から明星が勢いよく飛び出してきた。
咄嗟に鞄で守ろうとするとたまたま明星の
頭にぶつかってしまい、
明星は頭を押さえて動かなくなる。
「ううぅー酷いよ和馬ー…」
「飛び出してくる方が悪いだろ」
しかも明星だ。
昨日の今日だととても気まずい。
普段通り、『和馬』になれてるだろうか。
「ねえ、和馬は小野瀬Aって子
知ってる？」
「んぶぅっっ」
「え？え？」
空中に俺の口から出た空気が飛び出す。
噎せながら、恐る恐る明星を振り返った。
「だ、と、お、俺知らねぇ…けど？」
「そっかぁー。実は昨日たまたま会ってさあ。
和馬、保健室にいたらしいからもしかして
知ってるかなーって」
「あ、あー誰か隣で寝てたっけか？
悪いな覚えてねぇわー…アハハハ」
明星はあらかさまに落ち込む。
相当私…『小野瀬A』と話したいらしい。
何をそんなにこだわるのか…話し相手、
女子の話し相手くらいコイツの顔なら
あっちから寄ってくるだろうに。
よくわからない。
さっき追いかけてきた女子でも紹介してやろうと
思ったがまた彼女達に会おうと思えず、
何も話さない事にした。
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作者名：里小翔 | 作成日時：2016年8月29日 22時
