after1*:王様の失敗 ページ28
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その時はただ重くのしかかる後悔に
飲み込まれないようもがくので精一杯だった。
完全に頭に血が上ってて、突然倒れた机を
蹴ったのは誰だったか思い出せない。
彼女の震えた声でようやく俺は目を覚ました。
酷く怯えた顔。
それだけで俺は死ねる気がする。
男装してようと、その綺麗な目はAのもので、
そこに写るのは紛れもなく机を倒した本人だった。
やってしまった。
俺は…なんてことを。
「私には…わからないよ」
「お…れは…」
言ったところで意味がない。
それを分かりきっていたから、
何度も誤魔化してきたじゃないか。
隠してきたじゃないか。
だけど張り裂けそうな胸が急かすように
ドク、ドク、と脈打つ。
何故か俺は怖がってたらしい。
Aの顔をまともに見れなかった。
「…A…の…こと…が…」
言うな
言うな言うな言うな言うな言うな言うな
言うな！！！！
言って、結果は分かってる。
分かってるだろ。
言ったところでなにも変わらない。
なのに、なのに、
無能な口はなおも言葉を溢そうとする。
「…すき…だ」
瞬間、世界は静かになる。
冷たい温度が俺の罪に怒ってるようで。
さっきまで鳴っていた心臓の音が聞こえない。
恐る恐るAを見ると、
よく分からない顔をしていた。
悩むように眉を寄せ、悲しそうに俯き、
なにかを決意したように顔を上げ、
ニカッと笑った。
「何言ってんだよレオ！」
それはAではなく、和馬だった。
俺の前にAは居なかった。
分かっていた。こうなることを。
だから大切に隠していたのに。
崩れる心がガラスのように割れていく。
あぁ、昔の漫画かよ。
情けないことに自分へのツッコミは
それが精一杯だった。
俺は部屋を出た。
目から落ちそうな雫が丁度和馬の横を
通りすぎたときに落ちる。
「…ごめんなさぃ…っっ…」
部屋を出ると、Aの泣きじゃくる声が聞こえてきた。
Aに届いていた。
それだけで、俺泣く合図になるには充分だった。
俺は泣いた。
情けないことに。
きっと、死んだ親友は
「ぶぁーか」と、
慰めないでケラケラ笑っただろうに。
あぁそうだ。
ここには和馬はいないんだ。
いるのは、和馬のいないAだけなんだ。
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作者名：里小翔 | 作成日時：2016年8月29日 22時
