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18*:少女の過去 ページ19

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「A〜!」

「和馬にいちゃん!部活は?」

「どうせ遅刻だからな!」

「うーわないわ…」

「ポピュラーなアイドルは遅刻しても慌てない!」



アホみたいな笑顔でうははと笑う和馬にいちゃん。

私がどんなに冷たくあしらってもいつもこんなだから
ある意味すごいよね。




「だから一緒にいこう!」

「…はぁ」




中学三年生の冬。


凍えるような日々、私と和馬にいちゃんは

ついこの前まで受験生だった。



そう、合格したのだ。

しかも偶然にも同じ高校。


あの夢ノ咲学園だ。

私は偏差値やら家からの距離で決めたのに対し、
和馬にいちゃんはポピュラーアイドルという
目標のため入学を決めている。



アホだなとは思うけど目標があるのはうらやましい。

まぁせいぜい頑張れなんて言って適当にしてるけれど。

ちょこっとだけ尊敬してるし憧れてる。




と言っても私はポピュラーアイドルなんて
目指さないし人前に立つのは嫌いなので
兄のような人間には絶対ならないけど。





「中学もあと少しだなー」

「そうだね」

「いよいよ俺もポピュラーデビューか…」

「ソーダネ」

「うわ適当だなー」




他愛ない会話を繰り広げていると、
背後から緊張した女の子の声がした。


奥木君、なんて呼ぶから呼んだのは和馬にいちゃん
だけだろうけど、念のため振り返ってみる。



真冬だというのに顔を真っ赤にして
体温が上がりきってる女の子。


あー…またか。





「じゃぁ先いってるね」

「え!Aー!」




鈍感な和馬にいちゃんめ。

これで何度目だと思ってるんだ。



卒業式を控えた今、和馬にいちゃんへの
告白ラッシュが毎日のイベント化としている。


毎日3人には呼び出されているのだ。

なのに未だになんの話だろ?みたいな
キョトンとした顔を浮かべてる。





…たぶん、また断るんだろうけど。





「俺がポピュラーなアイドルになったら
彼女に構ってあげられないだろ」



以前、和馬にいちゃんは教えてくれた。


これまたアホな理由だと思ったけど、
この言葉の裏には本気で“ポピュラーアイドル”を
目指してる熱が伝わってくる。



そう、アホすぎるのに彼は至って本気なのだ。


だから凄いと思う。





心の隅で、私も応援してたりする。









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作者名:里小翔 | 作成日時:2016年8月29日 22時

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