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14*:少年の焦り ページ15

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次の日は特に代わり映えない
特別何かがあったとかそんなことのない
平凡で平和な日だった。


と、放課後までのオレはそう思ってた。


放課後を知らせるチャイムが鳴り、
いつも通り帰り支度を進めていると
廊下から彼の声が私を呼ぶ。




「レオ?どうした?」



酷く真剣な幼馴染の顔に怯えながらも
聞いてみると、レオは私の方を見ずに何を
話そうか悩んでるようだった。



「…ここじゃなくて、…」

「おう?」

「…Aと、話したい」

「…」




なんだろう。


ザワザワと騒ぐ。

廊下の音がいつもより遠い。

だけど煩い。




なんだろう。




レオに付いていくと空き部屋に辿り着く。

そのまま彼は窓側の方へ進み、
オレは入口付近に立ち止まった。



振り返ったレオの頬が夕焼けで染まる。





「…昨日、明星といたよな?」

「…う、うん。まぁ…」


Aと話したい、らしいからオレは
Aのつもりで返事をする。



「…なんで明星なんだ?」

「どういうこと?」

「お前明星のこと嫌ってただろ…。
どうしてわざわざそんな…」

「それは…別に、アイツから誘ってきて…」





瞬間、鈍く重たい音が部屋に響いた。

続いて金属が地面に当たる悲鳴のような音。



それが、彼が机を蹴り倒したからだと気づくには
随分時間がかかった。




「…レ…オ?」




レオは暗く、光のない目でじっとりと
直れた机を睨み付ける。

握りしめられた拳が腕から震えていた。




どうしよう。

わからない。


レオが何を考えてるのか、

全然分かりそうにない。





「…断れば良かっただろ」




聞いたことのない声。

レオは怒っていた。




「そ、れは…断ったけど…新作のデザート
奢ってくれるって言ってたから…」

「そんなの俺でもいいじゃん」





わからない。

わからないよレオ。





「…何が、言いたいの?」

「…っ、」

「言ってくれなきゃ…わからないよ…。
レオが今なに考えてるのか、…

私には…わからないよ」




私の声は震えていた。

情けない。


顔をあげたレオの顔はとても辛そうで
悲しそうだった。

レオの方が泣きそうだ。








「…お、…れは…」




廊下のざわめきがまた遠くなる。


世界に私とレオだけ置いてかれてるようだ。








ざわめきの中、



レオのか細い声が聞こえてきた。









その時だけ、世界は静かになる。









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作者名:里小翔 | 作成日時:2016年8月29日 22時

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