11*:少年の覚悟 ページ12
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放課後になった瞬間、明星が何か奇声を
発しながら教室を飛び出していった。
何事か…と他人事のように考えたてたが
昨日の変な約束を思い出し、俺もそのあとを
全力で追う。
が、
運動神経のいい明星に俺が追い付けるわけもなかった。
「はぁ…ぁーー…くっそ…」
ややこしいことになってなければいいけど…。
普通科とアイドル科を繋ぐ唯一の廊下で
ズルズル壁に凭れる。
熱くなった体に冷たい壁が気持ちいい。
頭がぼーっとする。
「あー！和馬！」
「…明星」
どうやら校舎を走ってきた明星が
ケロッとした顔で俺に近寄ってくる。
マラソンしたあとの人間とは思えないくらい眩しい。
「…あーのさ。明星」
「んー？」
「その、小野瀬Aさん？がさ、
さっき『帰れない』っていってたぞ」
「いつ？！」
「えっと、さっき教室に…」
「わかった！ありがとう！！！」
そして明星はまた全力で走っていった。
アホは元気なのか、元気だからアホなのか…。
あーだめだ。
明星を見てると和馬にいちゃんのことをよく思い出す。
うざいくらいキラキラした笑顔と
アホすぎる元気がどうも似てるようで。
もう俺は追いかける事も諦め、
また音楽室へ向かった。
放課後の音楽室は誰かがクーラーを
消し忘れたらしく、
熱くなった体がどんどん冷えていく。
…きっと前から、私は少しだけ思ってた。
「…何バカなことしてんだろ」
くだらない。
和馬にいちゃんになれるわけでもないし、
和馬にいちゃんが帰ってくるわけでもない。
私がどんなに真似たって、
和馬にいちゃんは和馬にいちゃんのまま。
Aは、Aのまま。
どこかで分かってた。
気づいてる自分がいた。
それでも。
「…」
これが、精一杯の償い。
私がこの世に生きてはいけない。
生きるべき人間は和馬にいちゃんなのだ。
まだ、終われない。
だから、明星にバレる訳にもいかない。
「…よし」
大丈夫。
俺は、ここにいる。
そう言い聞かせて、俺は窓際に横になる。
鼻がつまるような感覚と目頭が熱くなったけど、
俺は知らないふりをした。
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作者名：里小翔 | 作成日時：2016年8月29日 22時
