20.拗れ、ねじれ、すれ違う ページ21
テレビから聞こえる同じような報道。
いい加減、聞き飽きてベッドに体を沈める。
「毎日毎日飽きるわ……」
「私は飽きるどころじゃないんだけど……」
当事者1の声が聞え、思わず飛び起きる。
ドアの方へ顔を向ければ、Aと思われるシルエット。
その後ろには特徴的な赤髪と紫髪が見えたので、征くんとあっくんだとわかる。
いつものように征くんは窓際の椅子に座り、
Aはベッド横、あっくんは扉側の椅子に腰かけた。
「やっぱ大変なの？」
「大学とかバイトはね」
「家の方は？」
一番報道陣が殺到しそうな家のほうについて聞けば、肩をすくめた(様な気がする)。
Aは持ってきてくれた見舞いの品、林檎の皮をむいていく。
「最近は家に帰ってないからそこは平気」
「え、どこに帰ってんの？」
「赤ちんに頼んで大学近郊の別邸に泊まってるんだよねえ」
「あ、そうなの」
聞いていないだけに驚いて征くんを見ると、彼は優雅に備え付けのポットで紅茶を飲んでいた。
「……今日いうつもりだった」
「別に怒ってはいないけど」
「……そうか」
なんか落ち込んだ気がしたが、とりあえず放置。
一口サイズに切り分けてくれた林檎を一つもらい、本題に入る。
「涼くんはなんて？てか、連絡あった？」
「……あったよ」
「親を介してねえ」
Aに聞いているはずなのに、あっくんが答えている気が……。
そのことに内心首をかしげながら、彼女に問う。
「なんて言ってたの？」
「『こっちでなんとかするから、暫く誰かの家とかに泊まって』だって」
「……それ、本当に涼くんが言ったの？」
「知らんっ」
勢いよく林檎に噛り付いたのを見て、
イライラしてたんだなあと今になって察する。
これ以上の詮索は逆鱗に触れるなと思い、口を噤んだ。
病気のせいもあったと思う。
でも、征くんは気づいていたんだろう。
Aの頬が赤かったことも。
あっくんの様子が可笑しかったことも。
私は気づけなかった……。
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作者名：星蛍 | 作成日時：2018年9月5日 23時
