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19.近くて遠い ページ20

カーテンの隙間から差し込んだ朝日で目が覚めた。
ひりひりと痛む目元に、腫れてないかなど不思議と思わなかった。

昨日どうやって家まで帰ってきたのか覚えていない。
ショックが大きすぎて……。


「はあ……」


前髪をくしゃりとかきあげ、うなだれる。

無意識にリビングチェストの一番引き出しに手を伸ばしていて、ハッとする。
最近日課のようにこの中にある写真(・・)を見ていたせいだ……。

思わず、乾いた笑みがこぼれる。


「何やってんすかね……」


もう遅いのに……。


昨日のあの二人の光景が頭をよぎり、目を瞑る。

胸が痛い。
目が眩む。
喉が痛い。

ぎゅっと心臓辺りを押さえたとき、けたたましく電子音が鳴り響いた。

その音に一瞬驚くも、舌打ちする。
こんなときに……。

スマホを表にすれば、マネージャーの名前。
今日は午前から仕事だったのを思い出し、憂鬱に出る。


「はい、もしも」

「涼太っ、テレビ見たっ?」


もしもし、も言い終わる前にマネージャーの焦った声が頭に響く。

そのことにも小さな苛立ちが積もる。
見てないとぶっきらぼうに答えれば、テレビを早く見るよう促される。

のろのろと緩慢な動作でテレビをつけると、


「『いやあ、あの黄瀬涼太もついに熱愛報道ですかあ』」

「『相手は長身の一般女性。なかなかの美人らしいですねえ』」

「……は」


テレビに映っているのは紛れもない自分。
そして、俺に腕を掴まれている……A。

顔はぼかしてあるが、見る人が見ればAだとわかるだろう。

熱愛とでかでかと書かれた報道に茫然とする。
スマホからマネージャーが何か言っているのが聞こえるが、それどころではない。

アナウンサーが好き勝手にいっている……。


「……A」


また、俺はあいつを傷つけてしまうのだろうか。
また、俺はあいつを傷つけるのだろうか。

やっと気づいたのに。
自覚したのに……。


__「涼太っ」


幼い頃の笑みを思い出す。

大好きだったあいつの笑みを……。



あんなに近かったのに、今はこんなにも……


「遠い……」


止まったはずの涙が一筋、頬を伝った。

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作者名:星蛍 | 作成日時:2018年9月5日 23時

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