稽古タイム ページ7
ーその日の朝、10時。
｢よろしくお願いします｣
｢はい、よろしく。まだ、足の怪我残ってるんでしょ？無理のない範囲で構わないからね｣
まずはひとらんと護身術の練習をする事になった。模擬戦を行った頃からその話は出ていたのだが、私の怪我だとか体調不良だとか、基礎トレで体力ができてからなどの理由から後へ後へと回っていたのだ。
｢護身術っていうのがあるのは知ってるよね。多分、やり方は君の世界のものとそう変わらないと思うよ。まず、護身術がどういうものか分かる？｣
｢えっと…、身を守るための体術…？｣
｢うん、大まかに言えばそうなるね。でも、護身術では、弱い力でも相手に一瞬の隙を作って逃げるというのが目的だから、ポイントさえ押さえれば女性でも簡単に身につけられるのが特徴だね｣
ひとらんが言うには、腕の動かし方、力の入れどころ、掴む位置、相手の出方からそれらのポイントさえ狙えばいいとの事。
しかし、それらを全て覚えるのって難しくないですか？
｢だから、まずは1番覚えておきたい3つから教えるね｣
｢お願いします｣
まずは基本的な力の入れ方、それと力の弱い人でも簡単にできるものというのを実感するために、膝蹴りを教えて貰った。
｢じゃあ次。例えばこう、手を掴まれた時。振りほどこうとしても強く握られたら、逃げられないよね？｣
実際に私の手を掴んで説明してくる。
試しに腕を振るがビクともしない。
｢で、大抵の場合はこうやって―｣
グイと引っ張られる。
｢―引かれるでしょ？まずは俺がやってみるから、俺の手掴んで引っ張ってみて？｣
見上げると彼の日本人らしい、男らしい整った顔が近くにある。
手が離れた瞬間に、少し離れつつひとらんの手を掴み引っ張る。
｢相手の引く力に沿って足を踏み込む。踏み込んだら手を開いて…一気に体勢を引いて、開いた手を耳に振り上げる…！｣
｢わっ｣
ひとらんはあまり力を入れていない。しかし、強く掴んだはずの手から、ひとらんの手がするりと抜ける。
｢手を開かれた時、すごく握りづらくなったでしょ？手を開くのは相手に力を入れさせづらくする意味もあるんだ。じゃあ、今度はやってみて｣
そう言うとギュと手を掴まれ引っ張られる。
引っ張られるのに沿って足を踏み込む。
思い切り手を開くと、ひとらんの握る力が一瞬緩むのを感じる。
その瞬間体ごと手を引き振り上げる…！
すると、簡単に握られていた手が抜ける。
｢す、すごい…！｣
教えて貰ってるとはいえ少し恥ずかしい→←無茶じゃないですか？
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作者名：にこ† | 作成日時：2019年10月27日 7時
