入れ替わり ページ8
｢はあ、やっぱり忘れてたんすね｣
そうか、インカムで助けを…。と思ったが女子更衣室でそんなこと出来ない。
｢廊下出てからでも遅くないんじゃないですかねぇ｣
まるでこちらの考えが手に取るかのようにわかっているような発言。なんで彼はそんなにこちらの考えを察してくるのでしょうか。
｢いいですか。アンタは客人。オレはアンタの事を受け入れてる訳じゃないですけど、最低限は護らなきゃいけない義務があるんで、最低限のことはします。ただ、それ以上は求めないでください｣
今回はたまたま1番最初に見つけたからってだけですので。
そう付け加えると、ドアの開く音とともに入ってきたしんぺい神と入れ替わるように、部屋から出ていった。
｢なんか、ショッピくんがめちゃめちゃイライラしながら出ていったけど、なんかあった？｣
へらへらと笑いながら、カーテンを開けて入ってくる。
｢はい、まあ…。色々…。アホって言われました｣
｢あははは！なんでそんなに敵意むき出しなんや、アイツ！可愛らしいな｣
ムフフ、と何やら変な笑いを浮かべるしんぺい神。
可愛らしいなの一言に、何やら含みをかんじたが気にしないでおこう。
｢にしても、2日間で3回もここに来るなんて…。俺のこと好きなん？｣
｢いや、ご迷惑おかけしてます｣
冗談と受け取り、流して答える。
連れないなあ、とパールブルーの瞳を細めるしんぺい神。
｢あれ…｣
先程からいやに表情がみてとれると思っていたら、『神』と書かれた面布がない。
癖の強い少し長めの前髪から、髪色と同じパールブルーの瞳。
へらへらと笑う口元は、アヒル口っぽい。
｢あ、気づいた？せや、外したまんまつけるの忘れてたんよ｣
恥ずかしいわァ、という彼はその言葉に反して全くそんな素振りは見せていない。
｢グルッペンとかには、倒れたこと伝えてあるから、トレーニングは明日からやで。点滴は昼には外せるよ｣
｢何から何まで、すみません｣
そう告げると彼は優しく微笑んだ。
｢ええの、ええの。医者の仕事は患者を元気にすることやで。それになんだかんだ、休めてなかったやろ？今日はゆっくり休みや、な？｣
ポンポンと頭を撫でられる。
誰かに頭を撫でられる経験など、特に男の人からは小さい頃に父親がしてくれた以来で、とてもくすぐったい。家族からの経験を省くと、初めてだ。触られたところが熱くすら感じる。
そのまま、目を瞑り再び眠りについた。
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作者名：にこ† | 作成日時：2019年10月3日 14時
