【d!】傾国の天使。 (ページ2)

今日:24 hit、昨日:120 hit、合計:1,708,023 hit

２△ 楽園からの逃避行ページ2

.

「何アホな事言ってるんですか、お嬢様」

　優しく抱きとめられ、その場に降ろされる私。チーノは眼鏡の向こうで何処か戸惑ったような目をしていた。はぁあん、相変わらず分厚い眼鏡の下の顔はとてつもなく綺麗だ。このままそのうる艶の輝く唇を奪ってしまいたいくらい、ほんとうに色男なチーノに私はしなだれかかる。
「⋯⋯だってこの先このままいても私は側室になるか見知らぬ男に売られるのよ？嫌よ。⋯⋯ねえチーノ、ダメ？」
　自分の絶世の美貌を出来るだけ利用してチーノを見上げる。それだけでチーノは狼狽えた。この世界不細工は私のような美少女に寄りかかられることなんてない、ましてや甘えられることなんてない。だからこそ私は不細工にモテる。これis真理。
　私はチーノと愛の逃避行できるなら何でもいいの、このイケメンと愛の逃避行させてよお願い⋯⋯！！

　私の言葉に黙り込むチーノ、あながち私の考えは間違っていないのはチーノもきっと分かってるはずよ。きっとこのまま逃げずに貴族として過ごせば、私の想像した通りになるでしょうね。

「す、少し時間を下さい」
　迷った末、チーノが出した結論はそれだった。ふふ、落ちたわね。

「⋯⋯ええ、分かった。でも私には時間がないからなるべく早く決めてね？」
　彼の骨ばった手を頬にそっと寄せ、庇護欲を誘うこの目でじっと見つめればチーノは苦しげに頷いていた。

　────そしてその数日後、私は無事チーノとの愛の逃避行に成功する。

.