【d!】傾国の天使。 (ページ1)

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１△ ドレスの裾を持ち上げてページ1

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　この世界に生まれ落ち、私は鏡を見て人生の勝利を確信した。
　父譲りの淡いヴァイオレット色の髪に庇護欲を煽る不安げに揺れるローズクォーツのような瞳。そして成長した今、胸には大きなメロンが二つ実っていた。

　もうこれは勝った！勝ったわ！！イケメンと結婚出来る！！！と私は鏡を見て鼻息を荒らげ興奮した。

　まあ、そう現実はそう甘くはなかった訳だけど。

　⋯⋯システィーナを愛してしまった、ねえ？

　勝ちを確信したあの時が懐かしい、誰がこんな絶世の美少女が服を着た子豚と婚約させられると思うか。
　それにしてもよく自分の姉の婚約者に手を出せたものね。不意にシスティーナに目を向ければ殿下の腕をギュッと握り、嫌らしくに笑うシスティーナがいる。はあ⋯⋯と本日二回目の溜め息を私はついた。頭が痛い。

「君は私の事を愛していたから受け止めきれないだろう⋯⋯？だから側室とし「ああ、いえ。その婚約破棄、謹んでお受け致しますわ」
「⋯⋯へ？」

　すんっ、とした表情で私はそう言った。私だってあんな子豚と結婚したいとは思っていなかったのだ、正直ラッキーって感じなのよ。私の美的感覚は何時だって前世のまま。
　それでも我慢したのはここまで育ててもらった今世の親に対しての親孝行のつもりだった。まあ、どんなに頑張ろうと家族も私を道具としか見ていなかったし、妹が王妃になるならもう私は要らないだろう。

　側室になる前に、それかどっかの中年オヤジに売り飛ばされる前に逃げようかとすら思う。

　この世界に来てからは私の癒しはこの世界では醜いとされる“不細工(イケメン)”達を眺めること。此処まで我慢出来たのだって愛しの執事が居たからよね。
　きっと婚約破棄されたなんて言ったらあの子驚くだろうなあ、とくすくすと笑う。
「それで此方の方にサインすれば宜しいのですよね？では私は潔くこの場を離れますわ。お二人共お幸せに」
　誰よりも美しい自信があるカーテシーをして、ゆっくりと私は微笑んだ。

　私は表舞台から可憐に去ろう。

　悪女に仕立てあげられるなんてごめんだ、子豚の側室になるのも、何処かの中年オヤジに売り飛ばされるのも嫌なのだから。
　扉から出るなりドレスの裾を持ち上げて駆け出して、外で待つ愛しの執事に抱き着いた。そして叫んだ。

「チーノ聞いて！わたし婚約破棄されたの！！愛の逃避行でもしましょう！？」
「はっ！！？」

　案の定、チーノは目を見開いて驚いていた。

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