【d!】傾国の天使。 (ページ21)

今日:18 hit、昨日:275 hit、合計:1,709,155 hit

２１△ 年季の入った図書館ページ21

.

　目の前に広がるのは宝の山だった。一面に広がる本の世界、本棚は少し年季が入ってるけど逆にそれがアンティークとしていい味を出していた。
　ああ、娯楽のない今世で何度私は本に助けられたことか。毎日手入れされているのが分かるくらい綺麗な場所。思いっきり息を吸えば、本独特の匂いが肺一杯に入り込んだ。

「あ、おったエーミール。あそこにおんのがこの図書館の管理人や、まあ表向きの話やけど」

　コネシマが指をさした場所を見ればそこに居たのは、またもや素敵なイケメン。⋯⋯はあああん、絵になる。いや、むしろ絵だこれは。

　遠くから離れていても分かる絹のような淡いリネン色の髪の毛が窓から差し込む太陽によって輝かせて、穏やかな顔付きをより一層神々しいものにさせる。その人の乳白色の眼は瞬きながらこっちをみていて、少し柄の悪いコネシマとは正反対の物腰の柔らかそうな人がそこにいた。
　見たらわかる、とんでもなくカッコイイじゃん⋯⋯！きゃーきゃーと私の心のミーハーが喚き出す。

　暫く見惚れていれば、わなわなと口を震わせるその人。そしてばっと持っていた本を顔の前に掲げると

「ぉ、おおおおおお！！？！！おおおお！！？？女性！？女性ですか！？コネシマさんが連れてきたんですか！？」
「おう、紹介しよう思てな。アントネラや」
「なんっ、うううおおお、心臓ホンマ痛いどうしよう！！！そ、アッ、噂の女性ってその人なんですね！！」

　明らかに私に怯えていた。異様な怯え方、カタカタと震えるその肩は本当に私が怖いんだと分かる。
　縮こまって怯える彼を見て何だか申し訳ない気持ちになってきた、普段の私ならこの辺で手を握って自己紹介をするぐらいの事はしたんだけど、どうも可哀想で私もおろおろと彼を見つめることしかできない。

　コネシマに助けを求めるような目で見つめれば、彼は悪巧みをするような笑顔を向けてきた。

　やだ、すっごく嫌な予感がするわ⋯⋯。

「あー、コイツの昔話はデリケートなもんやから説明は省くけど女が怖いみたいでな。だからあんまり俺みたいにガンガン責めんなよ、まあさっきも言ったけどお前なら仲良うなれると思うわ。んじゃ、俺インカムで呼ばれたから行くな？後で迎えに来る」
「ちょ、コネシマ！！！」

　心無い言葉を残して、私に捕まる前にコネシマはさっさと図書館を退出していく。そして静かで穏やかな図書館には、私とその管理人の“エーミール”と呼ばれたその人しかいなかった。

.