episode.74 ページ28
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思わず凛月くんの家を飛び出してきてしまった。
近くの公園のベンチの上で体育座りをする。顔を膝に埋めれば、どんどんスカートは湿っていく。辺りは暗くて、電灯と月の光ぐらいしか光源は無かった。
「うぅ〜…」
自然と涙が溢れてくる。1度出た涙は簡単には止まらない。
_________________私が、お母さんを殺した。
その事実が深く自分の心に刺さって、喪失感やら疎外感が止まらなかった。その事実は、私以外の人達はずっと知っていたのだから。知っていた上で、みんな私と接してくれていたのだから。今まで優しく接してくれていたことにも理由がついてしまいそうで、偽りだったのではないかと疑ってしまいそうで、嫌だった。
「あぁ〜、最悪だ…」
「大丈夫?」
「…どう見ても大丈夫じゃないでしょ」
ん?
知っている声。目線を少しずらせば、その顔が顕になる。
「え。…瀬名くん」
「あんた、酷い顔してる」と言いながら隣に腰をかけたのは瀬名くんだった。凛月くんが瀬名さんとか瀬名くんに連絡したのだろうか。それで、私を探しに来てくれたのだろうか。そしたら、連絡されて家に戻らなければいけないかもしれない。今は、帰りたくないなぁ。
「ハンカチ、使っていいよ」
そう言って差し出されたハンカチを使って涙を拭けば、瀬名くんの表情がよく見えるようになった。
「酷い顔してる」私はそう言われたけれど、それは、あなたにも言えるじゃない。疲れきった顔で何も映していないような伏し目がちな目、泣いたような赤い跡もついていて。
だけど、そんなになっている彼の気持ちに気づいてあげられなかったことに加え、こんな状態の彼を労わるような言葉すらかける気力がわかなかった。
「ねぇ、A」
昔みたいな、優しい声色で
「俺と一緒にどっか遠くに行っちゃおうよ」
すぐ後ろにある銀色の月の光が、瀬名くんを照らしていて、それは見たことがないくらい美しかった。
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玲咲(プロフ) - おかゆさん» コメントありがとうございます!えええ、そんな勿体ないお言葉ありがとうございます…!めちゃくちゃ嬉しいです!!何度も読んでくださってありがとうございました(*´˘`*) (2022年11月23日 23時) (レス) id: 27f192e968 (このIDを非表示/違反報告)
おかゆ(プロフ) - 初コメ失礼します。この作品とっても好きすぎて1日に何度も読み返してしまいました。今までこういう系の話を読んだりしていたのですが、この作品めちゃめちゃ泣くぐらい好きです。途中何度もうぅぅ……となりながら読んでいました。遅いでが完結おめでとうございます! (2022年11月23日 21時) (レス) id: 4ef80cb4cb (このIDを非表示/違反報告)
玲咲(プロフ) - ねこかんさん» コメントありがとうございます!嬉しすぎて、10回コメント読み返しましたありがとうございます泣瑞希くんも好きになってくださってめちゃくちゃ嬉しいです!この作品書いて良かったと思えました。長い間お付き合い下さり本当にありがとうございました! (2022年11月6日 11時) (レス) id: 27f192e968 (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん - 時々感情移入しすぎて泣きました。神作品ありがとうございますこれは脳内に焼き付かれる作品だ最後に後世に語り継ぎます(語彙力なくなる系オタク)長文失礼しました (2022年11月6日 1時) (レス) id: 831f8c280b (このIDを非表示/違反報告)
ねこかん - 初コメ失礼します。お話が良すぎて、毎日2回は更新されてないか確認する日々でした…!!推しと親子のシチュでもう嬉しいのに、瑞希くんというオリキャラに惹かれまくって推しと同じぐらい好きになりました。もう瑞希くんとの恋愛メインでお話読みたいぐらい…!!!() (2022年11月6日 1時) (レス) @page50 id: 831f8c280b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玲咲 | 作成日時:2022年8月12日 13時