策士な彼の愛は重い【そらる】

07. ページ7

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あんなことがあったにも関わらず私はあの日と同じ居酒屋にあの日と同じ人といる。



「最近、歌録ってる？」


「んー、まぁぼちぼち」



このままあの日のことは流れていくと信じたい。



「仕事が忙しくてまとまった時間が取れなくてさ、録音も思ったようにいかないし」


「そんな忙しいの？」


「うん、今企画任されてて」



いつも通りの会話、いつも通りの距離感、いつも通りの雰囲気

大丈夫、変わりない。


大好きなキムチをつまみながらこの前みたいな間違いが起きないようにセーブしながらお酒を飲む。



「ここ、ついてる」



急にグッと近付いた距離と口元に触れるそらるの親指が私の心拍数を上げて、椅子から落っこちそうになった。


私もなんでこんなことで動揺してるのか分からないし、落ちないように腰に回された手をなんでこんな意識してしまうのか分からない。



「危ないじゃん笑」


「ご、めんありがと」



全くいつも通りのそらると全くいつも通りじゃない私。

自分でも馬鹿みたいだと思うのにバクバク動く心臓を止められない。

私はなににこんなドキドキしてるの？

相手はそらるだよ、今までたくさん嫌なとこも見てきたそらる。

この人は彼氏にしたくないタイプだ、って思ってたそらるだよ。


そらるの顔も見れずにセーブしてたお酒をグッと呷った。






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