ミラー・ツインズを守りたいんです

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「あ、勇吾。ひろが…」
「え？」



勇吾は俺と目が合った途端険しい顔つきになり、圭吾を押し退けて俺の真正面に屈んで俺の顔を見つめた。



「……」
「…勇吾？」
「…来い」
「えっ？…っ、ちょ…ちょっと待って…っ…ぅっ」
「ひろっ？」



いきなり立たされて動いたせいでお腹にズキッと鈍い痛みが走り抱え込んで蹲る。
圭吾が心配そうに何度も名前を呼んでくれるけど返事をする事ができない。
その内に身体がふわっと浮き上がり力強い腕に抱き抱えられる。
目を開けると勇吾が心配そうに俺を見つめ、ベッドに運ぶからと優しい声で言ってくれた。



圭吾が先に入ってドアを開け、俺の掛け布団を持ち上げて勇吾がそっと寝かせてくれた。
少し待ってろと言いおいて勇吾は部屋から出て行き、圭吾が残って俺の手を両手で包み込んで、大丈夫だからねと励ましてくれる。



「どうしたんだろうね…風邪かな…、これから熱上がってくるのかな…」



しんどいのにご飯作らせちゃってごめんねと眉を下げて謝られるから、そんな事気にしないでほしいと笑みを浮かべ首を横に振った。



「圭吾…」
「ん？」
「俺…平気だから…、仕事行って？」
「でも…」
「勇吾いるし、大した事ないからさ…」
「でもこんなに痛がってるのに…」
「……病気じゃないから」



病気じゃない。
この意味がピンと来なくらしくて圭吾は不思議そうに首を傾げた。



「え、病気じゃない…？じゃあなんでそんなに辛そうなの？」
「……」
「ひろ？」



言わせるのか、それを…。



どうしてとくりくり純粋お目目を真っ直ぐ向けられるものだから、返答に困って言葉が詰まる。

あぁ…どうして風邪って誤魔化さなかったんだろ…。



「圭吾、その辺にしてやれ」
「…っ、勇吾」



一体いつから聞いていたのか、勇吾がドアに凭れながら呆れたように溜息をついた。
湯たんぽを持ってきてくれて、お腹の上にそっと置かれた。



「…ごめんな、やっぱり無理にでも俺が後処理するべきだった」



そう言って布団の上から俺のお腹を労わるように優しく摩る様子に漸くピンと来たようで、圭吾はあっと声を上げてみるみる顔を真っ赤にした。



「あ…あの…ひろ、ご…ごめんね…？」
「ううん、俺こそごめんね圭吾。あんまり想像したくなかったよな」
「いや、あの、その…っ、お、俺…仕事行ってくるっ」



お大事にねと言い残して、顔を赤らめたまま出て行った圭吾を視線で見送ると、勇吾は又しても溜息をついた。

3→←喪失と充足感

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