ミラー・ツインズを守りたいんです

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「…きっとさ、あいつも冷静じゃなかったんだろうね。
だって勇吾だよ？あいつがひろに手上げるなんてありえないだろ」
「……」
「…ひろ、少し休んだら？昨日眠れなかったんでしょ？」
「でも勇吾が…」
「どこかで頭冷やしてるんでしょ。その内帰ってくるから」



叩かれたほっぺたなんてちっとも痛くない。
眠気なんてとっくに感じてない。

そんなのより…勇吾が心配で堪らないんだ。

外がピカッと嫌な光り方をして窓の向こうに目をやると、一呼吸置いてものすごい落雷の音が響いた。



「…ゆうご…かさもってない…」
「え？」
「っ、捜してくる…っ」
「ひろっ」



俺が行くからという制止を振り切って、ザーザーと叩きつける雨の中傘を手に飛び出した。









「はぁっ…はぁっ…」



家から勇吾の職場までの道…煙草屋の前…コンビニ…、一通り走り回っても勇吾はどこにもいない。



「勇吾……勇吾…っ」



名前を大声で呼んでも通行人が訝しげに振り返るだけで目当ての人物は見つからない。
不意に２０年前のことが頭を過り泣き出したい衝動に駆られるも、泣いている暇があったら捜さなければと再び名前を呼びながら濡れることも厭わずに走り回った。

近所の大きな公園を通り過ぎようとして、なぜだか足が止まる。
こんなところにいるはずがないと思いながらも足は公園の中に入っていて、嫌な予感が込み上げて早足で遊具の集まる中心へと向かう。



「っ、勇吾！」



捜し人は黒いフードで申し訳程度に雨を遮り、項垂れるような姿勢でブランコに腰掛けていた。
勇吾は俺の声にピクリと反応したものの顔を上げる気配はない。
俺は構わずに駆けよってそのままの勢いで勇吾に抱きついた。



「勇吾っ…ごめん、ごめんね…っ」
「……」
「俺…酷いこと…いっぱい…っ、ごめん…ほんとにごめんね…」



勇吾を見つけられたことへの安堵から涙がぼろぼろ溢れてきて、腕の中に収まった勇吾の冷え切った身体をとにかく温めようと冷たい雨から守るように上からぎゅうっと抱きしめていた。



「勇吾…大丈夫…？身体冷えちゃってる…」
「……」
「ね、帰ろう…？」



何も言ってくれない勇吾に心配になり、表情をよく見ようとフードに手を掛ける。
必死に顔を隠そうと背けながら暫く無言が続き、そして俺は…とようやく口を開いてくれた。



「…うん」



頷きながら優しく肩を摩っていると、次に続いた言葉に息が止まりそうになった。







「…もう…、帰れない」

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