ミラー・ツインズを守りたいんです

5 ページ47

「んっ、ベビーカステラうまっ」
「ちょ…食い過ぎ食い過ぎ」
「んふふっ、勇吾もからあげいっぱい食べていいから」



爪楊枝で挿して勇吾の口元に持っていく。
素直に口を開けるからそのままあーんしてやると、後ろから大げさな咳払いが聞こえた。



「公共の場でのいちゃいちゃは迷惑防止条例違反で…」
「わわっ、圭吾」
「チッ…うぜーおまわりだ」
「ふふっ、冗談だって」



圭吾の手には小さめのやきそばのパックが３つ。
他にもちょこちょこ食べるでしょと気を利かせてくれたらしい。



「ありがとー」
「さんきゅ…」
「あ、ひろのからあげも美味しそう」
「ん、どーぞ」



さっきと同じように爪楊枝で挿して渡すと、圭吾も同じように口を開けて待っている。
こういうとこまで双子だなと微笑ましくその口に入れようとした時、持っていた爪楊枝を勇吾に取られて代わりに食べさせた。



「えー、ひろからのあーん待ってたのに」
「誰が許すかよ」
「はいはい、妬きもちやきなお兄ちゃんですねぇ」
「てめぇ…」
「ちょ、喧嘩しないのっ」



慌てて勇吾を宥めにかかると、勇吾は盛大な舌打ちをして圭吾の手からやきそばを一つ奪った。
苦笑しながらも俺も受け取ろうとして、向かいのじゃがバターが目に入った。



「あっ、俺じゃがバターも食べたいっ、ちょっと買ってくる」
「あ、ちょっとひろ…」



じゃがバターの誘惑には勝てずすぐに買って戻ろうとすると、双子が立っている空間だけやけにキラキラして見えた。



「…ふふっ」



どうしよ…、すごい幸せかも。

何だか楽しそうに喋る圭吾と優しい目で相槌をうつ勇吾を微笑ましい気持ちで眺めていると、視線を感じたのか目が合った。
お待たせーと言いながら小走りに戻ると、双子は優しく微笑んでくれた。









.






カラン…コロン…

屋台が立ち並ぶ公園を抜け河川敷に向かって歩く途中、下駄の音が静かに響く。



「んー、お腹いっぱい〜」
「ふふ…、満足できた？」
「うんっ」
「おい、口元にソースついてる」
「え、嘘っ？」
「うそ」
「もぉ…勇吾のいじわる」
「ははっ」



危惧していた圭吾の呼び出しも今のところ無いし、勇吾も甘いのだけじゃなくてちゃんとご飯食べてくれたし、俺もお腹いっぱいになって幸せ。

時折風が頬を撫でる。
浴衣の隙間に穏やかな風が入り込んで気持ちがいい。

6→←4

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す