命令10 ページ23
川西side
ずっと放置するのもあれだから、とか適当な建前を吐いて俺は田中龍之介を背負って理科室の前までやってきた。既に誰も寄り付かなくなったここは、相変わらず胃をひっくり返すような異臭を漂わせていた。
まぁ特に躊躇する事無く扉に手をかけ、中に入った。
川西「ん?…………!」
自分の五感が狂いまくっていたのは承知していたが、この時は流石に疑った。
川西「……はっ、やっぱりいい性格してるわ」
背中にあったものを床に転がし、理科室を後にした。
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NOside
赤葦「木兎さん」
木兎「……ごめん赤葦。木葉……助けらんなかった」
体育館の扉に肩を預けた木兎はポツリと言う。特に表情を変える訳でもなく赤葦はそうですかと返した。それに対し木兎もまた反応するでもなく、言葉を切った。しばらく二人の間に沈黙が流れた。
木兎「……あいつさ、言ったんだ」
赤葦「……!」
木兎「"生きなきゃダメだ"って。……俺さ、それがずーっと引っかかっててよ」
ゆらりと姿勢を起こし、木兎は赤葦に顔を向けた。
木兎「俺が生きなきゃダメなの?木葉は生きなくても良かったのか?
……ずっとそうだった。雀田も雪っぺも、猿も木葉も……なんでか俺を守って死んでった。なんで俺特別扱いされてんだ?……なぁ、赤葦ぃ……
俺の命とあいつらの命って、何が違うんだ……?」
赤葦は答えられなかった。口を開いてしまえば木葉らを肯定する言葉しか出てこない気がしたからだ。憧れた人を今更下げる真似など、この状況下であっても赤葦には出来なかった。
眉をひそめた赤葦を見て、木兎は耐えるように口端を結んだ。
もう何を考えても気休めにさえならない。今度の命令では自分達は敵同士、どちらかが死ぬ可能性は高い。
木兎「……赤葦さ、俺の事嫌いっしょ」
赤葦「……は?」
突然の事に赤葦は惚け顔になった。
木兎「だってさ、俺がちゃんとしてれば誰も死んでなかったかもしんないじゃん。大事なとこでビビったり、間違えたりしなけりゃ……誰も」
赤葦「あんた……何言ってんすか?」
地を這うような低音に、木兎は目を見開いた。赤葦は目つき鋭く木兎を睨みあげた。
赤葦「……俺達には、後悔する権利なんかないんですよ」
木兎「あかぁ…し……?」
赤葦「何人死んだと思ってるんですか。……8人ですよ8人。後悔するには遅すぎるんです」
最後の方で声は掠れた。
赤葦「これ以上……死を重くしないでください」
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すみた先生(プロフ) - 生きてる人さん» 読んでいただきありがとうございます!自分でもなんで川西をここまで育てたのかよく分かりませんが、役がハマったようで良かったです(笑)。どうかそのまま生きてください…… (7月24日 23時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
生きてる人(プロフ) - 読んでいるうちに片鱗は見えてたのですが命令9の川西が本当に大好きすぎました!!!!!!このような素晴らしい川西をありがとうございます!!あなた様のおかげで命が救われ気力体力全回復しましたありがとうございます!!!!!!! (7月24日 8時) (レス) @page3 id: 17d3aa535f (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 命令9の最後にて、チーム分けに間違いがありました。国見と金田一が逆になっていた事をご指摘頂きましたのでここで報告させて頂きます。混乱された方、大変申し訳ございませんでした。訂正し、お詫び申し上げます。 (2022年1月3日 19時) (レス) @page48 id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 員脚さん» ありがとうございますっ!どんどん加速してラストスパートかけていくんでよろしくお願いしまーす!! (2022年1月2日 22時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
員脚 - あらあら!!!川西くんが活躍しちゃうわ!!!まさかBチームが勝つとは!!やっぱ“すみた先生”最高っスワ (2022年1月2日 22時) (レス) @page48 id: a61a8e014c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2021年8月9日 12時