KING【ars M.A】 (ページ23)

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もう、気持ちの落ち込みがどうしようもなくてハンドルに頭をつけるようにして、ウーウー唸りながら泣く。

別に誰も見てないし。
こんな暗い地下駐車場で、誰も他人の車なんて気にしない。

しかも今日はクリスマスイブ。
周りの事なんか気にしてる暇が無いくらい、幸せな人しか居ないはず。

鼻水も出て来るけど、まぁ良いや。
もう、どうだって良い。何だって良い。

バーカバーカ、社長のバーカ。

ちょっとイケメンだからって、何なの！
人使い荒すぎるでしょ！

......バーカ、何なの。

...ユキちゃん、良いなぁ...。
私がもっと可愛くてスタイルも良くて、あんなにコロコロ笑える子だったらデートして貰えたのかなぁ...。

こんな実りの無い虚しい嫉妬なんか、したくないのに。

もう、何が一番悲しいのか分からない。
とにかく、消えちゃえたらラクなのに...なんて思う位には精神的にやられてる。
子犬とか与えられたら、癒され過ぎて号泣してしまうだろうって位にはズタボロ。

その時。

コンコン、と窓がノックされた。

ヤバイ、警備員さんかな...。
車から出た方がいいのかな...。

そんな事を考えつつ、涙を拭きながら顔を上げた。

「.....え？」

運転席側の窓から車内を覗いてるのは、社長で

私の顔を見て、うわ！って笑った。

何で...？
何で何で何で！？
忘れ物！？

慌てて後部座席を見たけど、忘れ物らしき物は何も無い。

また、コンコンと窓がノックされる。

社長が外で「開けてー」って言ってるのが、小さく聞こえた。

とりあえず、窓を開ける。

「...どうしたんですか...？」

あまり顔を見せないようにして、訊いてみる。

「それ、俺の台詞だよ？」
「え...？」
「どうしたの、そんなに泣いて」
「いやいやいや、泣いてないですけどね！？ちょっと空気乾燥してて目が乾いちゃって！」

私が笑って言うと、開けた窓に社長が腕を突っ込んで外からドアロックを外した。
そして、ガコーンとドアを開いて私を運転席から引っ張り出され

運転席と一緒にロックが外されてた後部座席に、押し込まれた。

あっとゆー間だったし、強引過ぎて、呆気に取られて何の抵抗も出来ないまんま

後部座席で、私は社長と向かい合ってた。
三度目の、至近距離。

社長の背後で、パタンとドアが閉まる。

ダンッ！と彼の右手が私の背後にある窓に伸びて、囲われたような体勢になる。

「これも壁ドンって言うのかな？」

社長の唇の右端が、キュッと上がった。