KING【ars M.A】 (ページ22)

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「駅前まで、とりあえずお願い。そこでユキちゃん拾うから」
「...はい」

何が悲しくて、私は好きな人のデートをお手伝いしてるんだろう。
そもそも、どうして私はこんな身分違いの人に恋してしまったんだろう。

あぁ...AIBER GAMEに転職なんか考えなければ良かった。
ゲーマーな自分を恨む。

...とか言いながら、最近はほとんどゲームもしてない。
社長の事で悩み過ぎて、それ以外の事にまで頭が回らなくなっていた。

帰ったら新作の恋愛ゲームしよ...。
もう現実逃避が一番だ...。

駅前には、モデルか！？と言いたくなるようなスタイル抜群の可愛い子が居て

まさか...と思ったけどやっぱりその子がユキちゃんで、彼女は停めた車の後部座席にスルリと乗り込んで来た。

「雅紀、今日はどこ行くの？」
「んー？ホテル？」

やだぁ！ってユキちゃんがコロコロ笑う。
かるーくそんな冗談言って、彼女の肩を抱きながらサングラスを取った社長。

「Aちゃん、ストームホテルまでお願い」

冗談じゃなかったのかよ！本当にホテル行くのかよ！...と、心の中で強がって突っ込む。
本音はもう、このまま消えてしまいたい位なのに。

ホテルなんて言うから、いかがわしいホテルかと思ったら高級ホテルだし...
クリスマスイブにそんなホテルでデートなんて、やっぱり身分違いだった...と余計に悲しくなる。

バックミラーでコソッと後部座席を見ると、二人が顔を寄せて笑い合ってる。
漫画みたいに、美男美女。

どんな拷問なの、これ。

ストームホテルの地下駐車場に入り、車を停める。

「ご苦労様。ありがとね」
「あの、...車はもう会社に戻して大丈夫ですか？」

お泊まりなら、私も車も必要無いだろうし...。
ってゆーか、もう一刻も早くここから離れたい。

「あー。ディナーの後、ユキちゃん送らなきゃだから待っててくれる？」
「...え？」
「よろしくねー」

社長はユキちゃんの腰を抱いて、ホテルの通用口へと歩いて行く。

え...？泊まらないの？
何かそれは、妙にホッとしたけど...

ディナー終わるまで、待っとけって？

「...嘘でしょ...何時間後なの、それ...」

時計を見て、文字盤がジワリと歪んだ。
その文字盤に、ポトリと涙が落ちる。

「...泣くとか...めっちゃダサい...」

やだなぁ、なんて笑いながら独り言零しながらどんどん溢れる涙を拭う。

「ホーント、酷い人だなぁ...暴君社長だよねー...」

アハ、と無理やり笑っても涙しか出て来ない。
胸、潰れそう。