Clear‐Crane‐Crime 4th【ars M.A】 (ページ16)

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121.喉仏。ページ16

先生の後ろをついて螺旋階段を降りてると

「でも子ー」

上から呼ばれて、顔を上げる。
手摺に両腕を乗せて、こっちを見下ろしてる二宮さんと目が合う。

「さっきの答えだけどさぁ」
「答え...？」

何の話だ？って考えて、一瞬で思い出す。

『何で先生は女の子を好きにならないのか...』だ！！

「ちょっ...！それ、今はっ...！」

先生に聞かれたらマズイって！

「やっぱ、オレから言うコトじゃねぇわ」
「...え？」
「ンフフ、バイバイ」

手首をフリフリと振った二宮さんにつられて、「バイバイ...」と手を振ってしまった。

「Aちゃん。ニノ、どしたの？」
「えっ！？」

前を降りてた先生が立ち止まり振り返ってる。

「何か、答え...とか言ってたけど」
「あー！クイズ！クイズしてたんです！その答えをね...」
「そうなんだ。どんなクイズ？」
「そんな大したクイズじゃないですよ！行きましょ！」

走って先生の所まで階段をかけ下りると、あと一段で先生に並ぶって時に

焦ってたからなのか足を踏み外して、ガクンと身体が落ちた。

「うわっ...！？」
「あぶねっ！」

もう...なんだこれ。
少女漫画でしかこんなの見た事無いよ...。

落ちた身体は、倒れる前に先生の腕の中にすっぽり収まってた。

煙草の匂い。
お酒の匂い。

それときっと、先生に染み付いてる歯医者さんの匂い。

「フフッ、大丈夫？」
「...だ、いじょうぶです...ごめんなさい」
「何で謝んの」
「だってご迷惑を...」
「別に迷惑だなんて思ってないよ？むしろ、役得」

えっ！？って顔を上げたら、先生の顔が当然だけどすぐそこにあって

驚いた拍子に、またバランスを崩してこけそうになる。

「わっ...」
「アハッ！あっぶない！結構、ドジっ子だね」
「...ホント、すいません...」

先生の手が、私の腰を抱き寄せていて

自分の手をどこにやったら良いのか分からなくて、ひとまず顔の横辺りに軽く挙げてキープ。
「手を挙げろ」って言われたよーな状態になってる。

「やっぱお前がライオンじゃねーか！」

上からまだこっちを見下ろしてた二宮さんが、ゲラゲラ笑いながら叫んだ。

「あっ！もう襲ってる！」

ヒョコッと顔を出した櫻井さんが、私達を指差す。

「うるさいよ！逆！助けてあげたの！って、ニノは見てたでしょうが！」

楽しそうに笑い合ってる彼らの中で、私は全然余裕が無くて。

ベースを見上げて笑う先生の喉仏を

じっと見詰めた。