Clear‐Crane‐Crime 4th【ars M.A】 (ページ17)

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122.夜道。ページ17

「お前らの方がリアルにライオンだろ！」なんて、若干気になる台詞を笑いながらベースに向かって言った先生に

上から下を覗き込んでる二人が「えー？何ー？聞こえなーい」「モテるから仕方無い」なんて楽しそうに笑ってる。
ホント、高校生みたいなんだけど。

「アハッ、バーカ。じゃあね！」

ヒラヒラと手を振った先生が私を見下ろして「行こっか」って腰を抱いたまま、階段を降り始めた。

腰！腰！この状態でどこまで！？ってドキドキしたけど、それは足がフロアに着いたと同時に離される。
ちょっと残念...とか思っちゃったけど、もう階段、踏み外さないように気にしてくれたのか...
って考えると結局キュンとする。

大人になってから恋したって、胸は少女みたいにキュンキュンするモンなんだ。

「潤くん。Aちゃん、駅まで送って来るー」

バーカウンターに先生が声を掛けると、潤さんはニッコリ笑ってこっちを見る。

「ありがとうございました。また、いらして下さいね！」
「はい！こちらこそありがとうございました」
「お気をつけて」

綺麗な会釈。
潤さんの仕草には、頭に全部いちいち『綺麗な』って付けたくなる。
私もちょっと真似して丁寧に会釈してみたけど、綺麗に出来たとは言えない。

店を出ると、ベタだけど風が気持ち良く感じた。
そんなに酔ってない！って思っててもやっぱりアルコールが体内を回ってる。
きっと、あの空間に気持ちも酔ってた。

先生が言う『週末の繁華街』はライオンだらけかどうかは別として、まだまだ夜を楽しもうとしてる人達で賑やかだし明るい。

酔っ払って陽気になってるサラリーマン軍団が向こうからやって来ると、先生は何気に私を背中に隠しながら歩いてくれた。

細いのに、広い背中。
Tシャツの上からでも、肩甲骨が分かる。

この背中に触れたい...と手を伸ばしそうになって、慌ててグっと拳を握りしめる。

後姿だけでも、もうこんなに好きになっちゃってるのかぁ...って実感して溜息が漏れ出してしまう。

「先生」

黙ってると、余計に私のスキスキビームが先生の背中に穴を開けそうだったから声を掛けた。

「ん？」

振り返った先生が「あ」って立ち止まる。

「俺、歩くの速かった？」
「あっ、いえいえ！そんな」
「ごめんね」

アハッ、って笑うと先生は私の隣に並んで歩き出した。

長い脚で、私に歩幅を合わせてくれる。

このまま二人で道に迷えないかなー...なんて、バカな事、考えた。