またやりたいなんて思ったり ページ18
今だからわかる。前の私は、余裕がなかった。だから弱かった。
弱いから、周りを考えられない。
弱いから、勝手に落ち込んで心を閉ざす。
弱いから･･･。
私は思いきって、自分の頬を叩いた。
「！？ど、どうした！？」
言い訳なんて、しちゃダメだ。
『あぁいや、なんでもないよ。私今から着替えてくるね』
私は舞台裏の方に足を向けて走り出した。
「なんだったの？あれ」
「さあ･･･」
なんて会話も露知らず。
場所は変わり楽屋。
私が一番最後だったらしく、入った途端なぜかすぐ人に囲まれてしまった。
『み、みんなどうしたの？私なんかした？』
「なんかしたじゃないよ！スカウトされてたじゃん！」
あぁ、さっきのか。
「ちょっと聞いたんだけど、ハピプロって言ってたじゃん！あんな大御所からスカウトとかレアじゃない！？」
「どうするの！？ハピプロに入るの！？」
みんなの顔と期待の目が私の方に押し寄せてくる。
こういう時、なんて言い返せばいいかわかんないし、私の言った言葉で失望するかもしれないけど、ここでちゃんと言わなきゃ、私は成長できない気がする。
『えーっと･･････考え中･･･です』
みんなの声が、明らかに落胆した。
………やっぱり、失望させちゃったかな。
「でもでも、考え中は迷ってるってことだもんね？もっと舞台に出て、たくさん演技をしたら考えが決まるかもしれないし」
「確かに！もし芸能人になっても、演劇科はAをしっかりサポートするから、安心して！」
声が落胆したのも束の間で、すぐに明るく声をかけてくれた。
『ふふ、ありがとう』
そんなこと言われたらさ、また芸能人やりたいなんて思ったりしちゃうよ。
揺らいじゃうよ。
まだ、カメラの克服もしてないのに。
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作者名：さかな | 作成日時：2023年3月31日 0時
