九話 ページ10
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『さいっあく……』
ブオオーと後ろからドライヤーの音が聞こえる。
あの後、運良く羽風先輩が通りかかり、助けてくれた。
濡れた服を全部脱ぎ、ジャージに着替えた後に保健室で髪を乾かしている。
気遣いなのかなんなのか、羽風先輩に乾かしてもらってるけど。
「災難だったね〜」
『本当ですよ。噴水の縁に座っただけなのになんでこんな事態になってるんだか』
未だに怒りが収まらない私を、先輩は優しく宥める。
「奏汰くんもわざとじゃないと思うけどね。良かれと思ってやってるんだろうけど……」
『もしこれが真冬だったらと思うとゾッとします。夏よりの春だったからまだしも』
噴水に落とされたからわかったけど、ぷかぷかするの意味をちゃんと分かってなかった。言葉通りとは思わないじゃん。
乾かし終わったのか、ドライヤーの音が消えた。
「はい、終わったよ」
「ありがとうございました」
あんなにびしょ濡れだった髪が、今やもうその後方もない。
髪が長くなくてよかった。長かったらもっと時間かかってただろうし。
「てか、なんで奏汰くんのこと探してたの？」
『ああ、それは部活の日程を聞きたかったので』
「ええ！それ昨日でもよかったじゃん！」
俺知ってるし！とか言われたけど、内心信用できないしなと思っていたことはさすがに本人に言うべきじゃないだろう。
『家に帰ってから思いついたので。それに、連絡先とか交換してないし』
「じゃあ今からしよう！」
………あ、これちょっと面倒なルート引いたかも。
『すみません、携帯は教室にあるので……』
「俺の電話番号渡すよ！今日の夜通話していい？」
うーん、逃げられない。
これがチャラ男、羽風薫の攻撃なのか。
『分かりました。登録しとくので遠慮なくどうぞ』
「本当に！？やったー！年下の女の子の連絡先って持ってなかったんだよね〜」
んなコレクションみたいな。
人の連絡先だぞ。プライバシーなんだぞ。
………てか、羽風先輩ってどんな人数の女の子を誑かしてんだろう。
人によって系統も違うし、年齢も違うし。
明るい系からおとなし系まで？
はっ、もしかして熟女派？
『うわぁ……』
「え、なんで俺引かれてんの？」
好きになるタイプは人それぞれだもんね。うん。
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作者名：さかな | 作成日時：2023年10月23日 21時
