二十六話 ページ27
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｢じゃ、四宮。これ頼むな｣
『わかりました』
部活は無いが雑用はある。プロデューサーとしての仕事で私が唯一できることだ。
またもや生徒会に届けるのだが、物の内容は変わらない。
ただ少し量が少ないだけ。
これくらいなら、また前みたいに扉の前でぼったちにはならないだろう。
それにしても、今私にある不安は生徒会長がいるかどうかだ。
いたら萎えるし、いなけりゃ万々歳。
顔は見た事あるけど、あの顔は笑顔で人殺してる。
あんず先輩とはまた別の怖さというか、権力や財力でどうにかしようとするのが怖いというか。
力という力でねじ伏せてきそう。
もしいたらどうしよう。扉開けた途端固まっちゃいそう。
意を決して扉を開けると、そこにいたのはうなだれている姫宮の姿だった。
『なんだ、姫宮か』
意を決し損だな。
｢なんだとはなんだ！僕は桃李様だぞ！｣
『分かってますよ桃李様〜。無礼を働いてすみませんね』
お付きの伏見先輩の姿が見えないが、用事でもあるのだろう。それかトイレ。
｢そのダンボールなに？｣
『さぁ？資料なんじゃない？』
中身なんて知ってるわけなかろう。
『てか、なんでさっきうなだれてたの？気分悪いの？』
｢仕事したくないの！あーもう！なんでこういう時に限って弓弦はいないの！？意味わかんない！｣
わがまま桃李様。
『伏見先輩ならもうすぐ来るんじゃない？』
｢………なんでそう思うの｣
『だって足音聞こえるし』
コツコツと、生徒会室の扉の奥からローファーの音が聞こえてくる。
｢嘘だよ｣
『嘘じゃないって』
｢だって僕は聞こえないもん｣
『なんで？こんなにわかりやすいのに？』
そもそも近くなのだから分かって当然だろう。
｢………驚きました。あまり音は鳴らしていなかったのですが｣
｢あ、弓弦！どこ行ってたのさ！｣
私と姫宮で言い合っている時に、後ろから本人が登場した。
｢四宮様は、大変耳がよろしいんですね｣
『え？いや、そんなことは……』
｢ご謙遜を｣
伏見先輩はニコリと笑って言った。
私は普通に聞こえたから言ったまでなのに、なぜ耳がいいとなるのか。
私はただの凡人だから、私ができることはみんなできることなんじゃないの？
｢お前、耳よかったんだね｣
｢ええ。四宮様のその耳は誇りを持ってよろしいと思います｣
私は頭が混乱したまま、頷くことしかできなかった。
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作者名：さかな | 作成日時：2023年10月23日 21時
