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影からぬっと現れたのは、大きな三節棍。
過去に似たような三節棍を見た事のあるAは、確かに使うの嫌やろな…と密かに真希に同情した。


(特級呪具、『遊雲』か)


呪術師や呪霊に階級を付けられるのと同様に、術師が扱う呪具にも階級がある。もちろん級が上であればあるほど威力は強くなる訳だ。真希が今使っている『遊雲』は特級呪具。その威力はそこらのナマクラ刀とはレベルが違う。

遊雲によって殴られた花御は、森の中へと吹き飛ばされていく。


「Aお前、ソレ()出してまで…」


体制を立て直した真希は、大空をうねりながら旋回する龍を見て目を見張った。Aが陰陽術を使うには体力を使う。そして、龍を使うにはその体力消費が普通の式神の数十倍。立っているだけでも精一杯だろうに、Aの瞳に宿った闘志はまだ消えようとしていない。


「あれ使わな勝たれへんと思ったから」

「………………そーかよ」


その姿は今までみたく弱虫でビビりなAとは遥かに掛け離れていた。Aがどんな性格で、彼女が本気を出せばどれ程強いか誰より周知している真希は、その成長ぶりにふっと笑う。


「恵、A、追うぞ」

「うん」


しかし、和んでいる場合ではない。まずは吹き飛ばされて行ったあの呪霊を祓ってしまわないと。


「玉犬───────『渾』!」



伏黒が手を組むと、その影が形を変えて大きな獣になる。それは見慣れた玉犬…とは少し違っていた。


「わんちゃんが凄いことなってる」

「説明は後でいいですよね」


玉犬、改め『渾』は真っ直ぐ森の中へと駆けていく。
それに続く真希と伏黒を追うように、Aも龍の背中に飛び乗った。座ったことで疲れが一気に押し寄せて、今すぐにでも倒れ込んでしまいそうになるのをぐっと飲み込む。冷や汗を流して今にも意識を手放しそうな主の姿に、龍は心配そうに小さく唸った。


「大丈夫、行こか」


太陽の光を浴びてきらきらと光るその鱗を撫でると、龍はしっかり掴まっていろとでも言いたげに一声吠え、大空へと舞い上がった。









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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年2月26日 12時

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