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「じゃあなんで真希はあんなこと言うたん?」
「強くなって欲しかったんだろ。強くなきゃ何も守れねえし、誰にも勝てない。何より、自分を守れねえやつが呪術師になんてなれやしねえもんな。……ほら、呪術師って命懸けだからよ」
そう言うパンダの言葉に、何も言い返せず俯いた。
…どうしてこんな簡単な理由がわからなかったのか。
転んで擦りむいただけで泣き喚いてしまうようなAに、命を懸けて呪術師を続ける度胸はなかった。だから、無様に死んでいくだけなら辞めればいいと真希は言った。
『今は答えられなくていい。でも、次逃げたくなったら思い出せ』
逃げたくて泣きたくてどうしようもない時、怖い思いを飲み込んででも目の前の敵に立ち向かう度胸と勇気を、誰がためを想って戦うその理由を、Aに気づいて欲しかったのだ。
誰かを“守りたい”という気持ちが、時として背中を押してくれることがある。元より誰よりも優しく、慈悲深く周りを包んであげられる広い心を持つAの事だ。そんな彼女なら、きっと“守りたい”想いが人より大きく力に反映されるだろう。
「…………それもそうやね」
納得したことで、以前から心の中に残っていた蟠りが小さくなっていくのを感じる。そして、ぶっきらぼうな真希の遠回しの優しさに、ほっこりと心が暖かくなった。
「ツナツナ」
「え?」
「高菜」
「……あ、うん。ありがと」
Aならやれるよと言うように親指を立ててくれる棘に、少しばかり不器用な笑顔を浮かべた。
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年3月4日 15時