101話 ページ9
周りの熱に囲まれながら静かに観ていた
ダンスの振り
歌の抑揚
位置の移動
全体での完成度が高い
先輩2人の実力はDDDで身に染みて感じたが
ライバルと認めたくない彼に目が離せなかった
「(あぁもう！
鬱陶しいのは司だけで十分なのに…！)」
歌とダンスのスキルは桃李の方が上だった
それは桃李自身の主観だけでなく、成績にも表れている
しかし、不思議とルイには魅力があった
可愛さや色気とは言い表せないような
「緋奈さまが気になりますか？」
「っはぁ？！！
ボクがあんな庶民を相手にするなんて…
…あり得ないし。」
小さな声でボソボソと言うため、弓弦はクスッと笑う
「きっと、坊ちゃまは緋奈さまを見習いたいのではないでしょうか。」
「…見習う？」
「えぇ。
それは決して恥ずかしいことではありません。
同胞と切磋琢磨し、自分に足りないもの、反対に得意なものを伸ばす…
それをせずして人は高みを目指せません。
同時に、それを認めないことが1番の恥でございます。」
「そ、そんなことボクだって分かってるし！！」
バカにしないでよね！！と桃李はそっぽを向く
するとライブは最高潮に盛り上がる
歌と歓声が耳に響いた
「ーーー♪」
夏を装った衣装に身を包み
マイクを手に持って笑顔を振り撒く
楽しそうだな…
思わず言葉が漏れた
いつだって楽しそうにする彼
幸せそうに頬を緩ませる
能天気なやつだと最初は思ってたが
練習となれば直向きに喰らいつき、焦っているようにも見えた
「(あいつ、何がしたいの？
あいつの目には何が見えてるの…？)」
ギリッと拳を握ると爪が食い込んだ
「(あれ？今…)」
ステージ上でルイは観客席の方を見渡した
目の端に映った姿はあのクラスメイトに似ていたからだ
しかし、今はライブ中
足を引っ張るわけにはいかないとマイクを持ち直した
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作者名：アニット9 | 作成日時：2022年12月25日 21時
