240メートルの誤算4【佐野玲於】

虚無感 ページ26

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わがまま言ってわざわざ遠回りして
Aの職場に寄ってもらった。
でも、そこにあるはずだった建物は

「なに？ここ…更地なってるよ。」
「え、なんで…？」

建物は跡形もなくなくなってて、更地。
その前に工事用のバリケードがいくつか置かれてる。
…嘘でしょ？

運転手さん、ただ事じゃない顔してる俺を見かねて、近くに停まってくれた。
マネージャーが気を利かせて外に出て、わざわざ工事の人に声かけてくれてる。
すぐに戻ってきたマネージャー
俺の顔見て

「コンビニになるらしいですよ。」

ひとこと、そう言った。
…コンビニって、じゃあ、Aの職場は？
潰れた？だからスーパーで？
向いてねえ
お前には全然向いてねえよ

それになんか、どうしようもなく虚しくなった。
Aが就職するとき、配属の営業所決まったって言われて
俺心配で、わざわざここ見にきたんだよ。
男多すぎるな、とか、でも駅からは近いな、とか
そういうこと考えたの、今でも覚えてる。
…ああ、なんか…


「…すみません、迷惑かけて。もう大丈夫です。」

運転手さんに頭を下げる。
俺は何やってんだろな。

「大丈夫？」
「うん、ごめんまじで、時間ないのに。」
「いやいいけど…」

心配そうな顔するメンバーにも、何も言えなかった。
虚無感が胸に溢れて、俺の世界からひとつ、色が消えた気がした。




そのあと、20時過ぎまで音楽番組の収録
楽屋に戻って早々、龍友くんに声をかけられる。

「20時半店予約してんねん、急ご。」

急いで着替えた。
全然気乗りしなかったけど。

エレベーターの中でも、タクシーの中でも、ずっと頭にAのことが浮かんでて。
心配でたまらない。
…なんだよ、もう、イライラさせんなよ。


「あ、来た。おつかれさま〜。」
「おー！さくらちゃん久々やん！」
「ね！久しぶり。」

裏口から案内されて店内に入る。
個室のドアを開けると、すでに女の子ふたり、座ってて。

目の前の席
さくらちゃんと目が合う。なんか気まずい。
…この子は彼女じゃないのに
さらに言えば、それがいいところだったのに。
なんで迷ってんだよ、俺。バカだろ、マジで。

「ふたりなんか頼んだ？」
「ううん、まだ。わたしたちもさっき着いたの。」
「そうやんや。何飲もかな〜玲於は？」
「…生。」
「ほんっま今日テンション低ない？嫌やんなあ？こんなやつと飲むの！」


ごめんごめんって、無理して笑う。
そのあとどれだけアルコール入れても、全然酔えなかった。


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答え→←人違い？

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