240メートルの誤算4【佐野玲於】

どちらかを ページ24

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さくらちゃんはそのあと、散々説教して帰っていった。

浮気されたくせにまだ好きなんてバカだよ！
とか
でも好きなら男らしく頑張りなよ！
とか。

後半はすげー怒ってたな。俺何も言い返せなかった。
不在着信
折り返す勇気なんて、あるわけない。
Aの声聞きたいし、結局会いたくてたまんないし
存在を思い出したそばから、頭の中Aのことでいっぱいだけど
でも、さくらちゃんとこんな関係になってしまった今
俺はAに何を求めるんだろう。


この状態のままより戻したいなんて、冗談でも言えるわけない。
二兎を追う者は一兎をも得ず
俺はこの言葉を身をもって実感したはず。

どちらかを、捨てないと。



その日は本当に一日中、不在着信の通知を眺めて過ごした。
何も手につかなかった。
俺が弱いせいで、ずるいせいで、さくらちゃんを巻き込んでしまった。
このことが今さら、すげえ大きくて重い足かせになってる。
選んだのは自分のくせに。

さくらちゃんはこんな俺を、しっかり見ていてくれる。
もちろん彼女じゃないから気が楽な部分もあるんだろうけど
今朝だって、電話かけ直しなよって言ってくれた。
そんなこと言うか？普通。
直前の夜まで俺は、さくらちゃんを抱きしめてたのに。

そんなどうしようもないバカな男に対して、ちゃんと正論言って諭してくれる。
俺は、最低だよ。
さくらちゃん、いっそ愛想尽かして無視してくれたらいいのにさ

…でも、どんなにいい子だったとしても
Aより大事なんてこと、あるわけないだろ。
冷静になって考えろ。
俺の人生に一番必要なのは、誰だよ。
……誰だよ



「玲於、さくらちゃんに言うてくれた？」
「…え？」
「うわ忘れてるやん。あしたメシ行こって！」
「…ああ、忘れてた。」
「もうええわ俺から言うとく。なんかあったん？めっちゃ元気ないな、今日。」


そう言った龍友くん。
なんもないよ
なんもない
ただ、前付き合ってたコから、電話きただけ。
それだけ。

それだけなのにさ。
ほんとにバカだな、俺は。


「なんもない、風邪気味で。」
「そうなん？気つけや。」
「うん。」


明日さくらちゃんに会うのが憂鬱だった。
顔見たらまた、悩んでしまう気がして。


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