#56を読む前に… ページ30
昔々、あるところに仲の良い男と女がおりました。
二人は日が沈むと、村の外れの川辺で会っては、将来のことを語りあいました。
ある日、男は仕事で旅に出ることになったので、女にしばらくの別れを告げて、自らの金の指輪を外し、女の薬指にはめてやりました。
「これは君が持っていてくれ」
と、いうようなことを男が言います。
「じゃあ、これを」
女も、自分の指から銅の指輪を抜き取り、男の小指にはめました。
「秋の収穫のころまでには、帰ってくる」
男は、そう約束しました。
夏の間、女は毎日のように男と会っていた川辺にやって来ては、シラカバの木にもたれ、楽しかった日々を思い出していました。
ところが秋になっても、男は帰って来ません。
金色の葉はすぐに落ちてしまいましたが、それでも男からは何の便りもありませんでした。
村に初雪が降った日。女は友人に誘われて、一晩泊まりに行きました。
他に友人も来ていて、一緒に糸を紡いだり、話をしたりして、とても賑やかに夜を過ごしていました。
歌を歌ったり、お菓子を食べたりしていましたが、そのうち話が弾んで、自分達の恋人の話になりました。
そして女が言いました。
「ねえ見て、この金の指輪。あの人が別れるときに、はめてくれたのよ。これを外せる人は、あの人しかいないの。」
すると、友人の一人が言いました。
「でも、そんなに貴方を思っているのなら、帰って来てもいい頃なのにね。どうしたの?大事な貴方のその人は。」
「……」
外は朝からの雪が降り積もって、辺りは真っ白です。
ですが、どうでしょう。外からはソリの鈴の音が聞こえるではありませんか。
近づいては、遠くなり…。
すると、鈴の音が家の側まで来てピタリと止みました。
家の扉が、トントントン、と音を立てます。
「こんな時間にどなたかしら。」
扉を開けると、そこには黒い外套を着た、自分の恋人がいたのです。
「ご覧なさい!帰って来たのよ、私の大切な人が!!」
そう言って、男に飛びつきます。
「私と一緒に家へ帰りましょう。」
と、友人達に別れを告げ、男のソリに乗りました。
男の指には、銅の指輪がはめられています。
やがて雪は止み、月の光が辺りを銀色に照らしました。
二人は月の夜道をよりそって、ソリを走らせました。
でもそれっきり、二人を見た者は、誰一人いません。
#56を読む前に…(2)→←# 駄作者の汚部屋(読まなくてもいいよ。多分すぐに消すので)
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かえこ(プロフ) - 天智就佐さん» いやいや、Mじゃないよ?!(汗)ちょっと踏まれたり殴られたりするのが好きなだけだよ?!← (2020年9月21日 6時) (レス) id: aec05404df (このIDを非表示/違反報告)
天智就佐(プロフ) - 悲報(吉報?):かえこ氏ドM発覚 (2020年6月16日 4時) (レス) id: b2ae4e5a5c (このIDを非表示/違反報告)
天智就佐(プロフ) - 性癖…きっと子供の頃からああなる基礎が出来ていたんですかね! (2020年6月16日 4時) (レス) id: b2ae4e5a5c (このIDを非表示/違反報告)
らん(プロフ) - かえこさん» ま、まぁそういう人もいますよ。(;^∀^) (2020年6月15日 18時) (レス) id: 632a5f4028 (このIDを非表示/違反報告)
かえこ(プロフ) - らんさん» あはは~(滝汗) (2020年6月15日 18時) (レス) id: aec05404df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえこ | 作者ホームページ:ホームページ?ナニソレオイシイノ?
作成日時:2020年5月17日 20時