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わざわざありがとう、と照れ笑いを見せる川上くんに傘を返し再びをお礼を言う。
川上くんが風邪を引いていなさそうなので少しホッとした。
私に傘を貸したせいで風邪を引いたとなればいくら土下座しても足りないからだ。
「また何か困ったことがあったら気軽に相談してよ、俺で良ければ手を貸すからさ」
「本当にありがとう…!今度お礼するよ」
「お礼なんていらないいらない!!そうだなぁ、今度例のバンドが新アルバム出すだろ。その時一緒に感想言い合おうよ」
「そんなのでいいの?」
「うん」
じゃあ、今度また一緒に音楽評論会でもしよう。白州くんと一緒に。
そう言えば川上くんは嬉しそうに頷いた。
「おーいノリ、これなんだけど…あれ、富永?」
「御幸、あぁこれ忘れてたやつだ!ありがとう」
「おー、忘れんなよなぁ。てかお前ら仲良かったっけ」
恐らく野球部での忘れ物を届けに来た御幸くんが、私を見て驚いた顔をした。
確かに、全く接点がなさそうな私と川上くんが談笑しているのは彼からしたら不思議だろうな。
「割と仲いいよ、ね」
川上くんの顔を覗き込むと「う、うん」と照れたように微笑む。
「ふーん」
「どうしたの?あ、もしかして川上くんと仲良くしてるの嫌だった?あぁそっか、御幸くんの数少ない友達だもんね…」
御幸くんの友達だもの、取ったりしないよと冗談ぽく言うと「いや俺のイメージ酷すぎ!」とツッコミが入った。
「意外な組み合わせだなって思っただけ。野球部とバレー部ってあんまり接点ないだろ?」
「そう?唯とか幸子とはよく話すよ」
「それは野球部っつーかマネージャーじゃん」
「いいじゃんマネージャーだって。同じ部員でしょ?」
「まぁそうだけど…」
「それに御幸くんだってバレー部の私と話すじゃない」
そう言われると困る、と御幸くんが苦笑いするので私はそれくらいにしてやめておいた。
「あ、いたいた富永さん!ササガワさんが呼んでたよ〜」
「三年の先輩も富永さんのこと探してた!あっちにいる」
廊下を通りがかった女子が私を見ては廊下の先を指さして声をかけてくれた。どうやらバレー部で何か話があるみたいだ。
女子にお礼を言った後川上くん達に「ごめんね」と小さく謝って先輩達の方へ向かう。
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作者名:ららら | 作成日時:2019年10月27日 2時