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東京に生まれ東京で育った私は、本来なら東京のそこそこ頭のいい高校へ入学する予定だった。
というのも、私にはずっと通いたかった本命の都立高校があって、入試の日を待ち遠しく待っていたのだ。
ーーしかし、入試当日。私はインフルにかかり試験を受けられなかった。
故に、私は滑り止めで先に受けていた私立高校に行くしかなく、本命の高校で華やかな高校デビューをするという夢は綺麗に消え去ったのだ。
「…しつれいしまーす」
青道高校に入学して数週間。友達も出来たし部活も入った。委員会もやりたかった訳では無いがなんとなく保健委員になって、それなりに充実した生活を送っていると思う。
「誰もいない?」
委員会が決まって早々、保健室にこれを置いてきて欲しいとどっさり書類を渡された私は渋々それを了承しここにやってきた。
入口に不在の札がかかっていないので、てっきり先生がいるのかと入ってみたが誰もいない。
扉は空いているし勝手に入るのも悪いとは思ったのだが、書類を置くだけだったので置いたらさっさと帰ろうと思っていた。
「だれ」
「うわっ、こっちのセリフなんですけど」
保健室を数歩歩いて声をかけられる。椅子に座った男子が私を見て誰、と聞いたのだ。
こちらのセリフだと思いつつも、彼の顔には見覚えがあった。いや、それよりも
「血、凄い出てる。転んだの?」
「ん」
「早く消毒しなくちゃダメだよ、待ってて」
「え、いい。先生来るまで待つし」
「ダメダメ、傷口からバイ菌入っちゃう」
これでも一応保健委員だし、と笑えば彼は「あ」と声を上げた。
「もしかして同じクラスだったりする?」
「え」
私は救急箱をガサガサ漁りながら彼の顔をマジマジとみた。
正直もう入学してから数週間経つというのにクラスメイトの顔を覚えきれていない。ましてや男子なんて。
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作者名:ららら | 作成日時:2019年10月27日 2時