6話 ページ8
ウ)「あと少…ケホッケホッ…」
あ)「おばーちゃん！」
鶴)「ウメ！」
ウ)「あぁ、大丈夫大丈夫。最近、風邪をひいたみたいでねぇ」
あ)「…本当に、風邪？」
ウ)「そうさ。…ほら、続き」
鶴)「…」
最近、おばーちゃんの調子が悪い。
…変な咳、してる。
おばーちゃんは”風邪”とか、”季節の変わり目だから”とか。
そー言ってるんだけど…。
何だか、嫌な予感がする。
病院を進めても、はぐらかされる。
あの、おばーちゃん大好きー！な、鶴丸でさえ、何も言わない。
それが、返って心配なんだ。
あ)「鶴丸」
鶴)「…」
あ)「鶴丸！」
鶴)「…ん？あぁ、何だ」
それにつられ、鶴丸の様子もへんだ。
なんだか、ボーッとしてる。
あ)「おばーちゃん。…大丈夫なのかな」
鶴)「大丈夫だ。ウメならきっと」
それは。
まるで祈るような声だった。
自分自身に言い聞かせてるような、声。
…あぁ、嫌だ。
怖い。
おばーちゃんが、居なくなってしまったらと考えると。
昔から、おばーちゃん子だった。
お母さんの思い出と言えば、仕事にいく背中。
シャキッとするお母さんはかっこいい。
が、寂しさを感じてた。
そんな時。
私を面倒見てくれたのは、おばーちゃんだった。
今だって。
お母さんはおばーちゃん家にいる事に否定も肯定もしなかった。
”忙しいから”と、送り出されてしまった。
もし、おばーちゃんが居なくなってしまったら…
私は、私は…
あの冷たく暗い部屋に、一人きりになる。
嫌だ。
人の温もりがないのなんて、生きてないのと一緒だ。
鶴)「…い…おい！」
あ)「え？」
鶴)「Aこそ、大丈夫か？…休憩しよーぜ」
いつの間にか、私の方がボーッとしていたらしい。
お茶を取りに行ってしまった。
鶴丸が居なくなった途端。
”独り”と言う恐怖が蝕んでくる。
…寂しい。
お願い、置いてかないで…！
不意に、体が何かに包み込まれた。
鶴)「…冷えるぞ」
それは、真っ白いモノ。
鶴丸の、服だった。
あ)「…うん」
鶴)「…ウメなら、大丈夫だ。あいつの事だ。ただの風邪だろうな！全く、世話がやけるなぁ」
あ)「…っゔんっ…」
鶴丸の服を深く被り、静かに泣いた。
鶴丸にはバレていただろう。
が、鶴丸は”大丈夫”と励まし続けてくれた。
自分の方が…辛いはずなのに。
鶴丸は、決して私に触れてこない。
それは、いい意味で、だ。
慰める時だって、ただ隣に座るだけ。
それがとても…心地よい。
その距離が丁度よかった。
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作者名：なーこ | 作成日時：2017年3月6日 17時
