5話 ページ7
ウ)「違う、右じゃない。左」
あ)「こう？」
ウ)「…はぁ。休憩にしようか」
あ)「ごめんなさい…」
上手く、踊れない。
どうやったら、おばーちゃんみたいに綺麗に舞えるんだろう。
鶴)「ま、気にすんな！」
あ)「上手くいかないー！」
鶴)「なぁに、最初っから誰も上手くいかないさ」
あ)「おばーちゃんも？」
鶴)「いや 、ウメはなぁ…」
あ)「…うまかったんだね」
鶴)「は、ははは。きにするな」
あ)「はぁ…」
おばーちゃんは何でも器用にこなす。
料理も、洗濯も、何もかも。
おばーちゃんみたいになりたくて頑張ってるけど、全然近づかない。
むしろ、遠ざかってるような…
あー、ダメダメ。
考えたら落ち込んでくる。
あ)「鶴丸、ちょっと見てて！」
鶴)「いいぞ！練習あるのみ、だ」
おばーちゃんを思い出しながら、舞う。
一つ一つ丁寧に。
ここは、右じゃなくて左。
ターンして、からの上に伸ばす。
ウ)「おや、上手いじゃないかい」
あ)「おばーちゃん！本当？」
いつのまにか、おばーちゃんがいた。
…褒められた！
ウ)「この調子なら…間に合いそうだね」
あ)「間に合う…？」
鶴)「おいおいおい、俺は必要じゃなかったなぁ？」
あ)「あ…。いや、そんな事ないよ！うん」
鶴)「…まぁ、上手くなったしいいか」
”上手くなった”
そう言われると、頑張ろうって思える。
その後も、少しずつ、覚えていった。
あ)「神楽ってさー、いつやるんだろ」
鶴)「それを俺に聞くのかー？」
あ)「鶴丸、ずっといるじゃーん」
鶴)「そうだなぁ」
夜。
夜桜を見つめながら、団子を食べる。
さっきまでおばーちゃんもいたけど…
先に寝てしまった。
その代わり、お団子をくれた。
あ)「…この桜、散らないねぇ」
鶴)「綺麗だよなぁ」
他の桜は全部散ってしまったのに。
この桜一本だけ、堂々と咲いている。
今も、夜風に吹かれながら花びらが散っていく。
あ)「桜の木下にはさー、死体が埋まってるらしーよ」
鶴)「へぇ、そりゃ驚きだなぁ。…掘ってみるか？」
あ)「やーよ。出てきたらどーすんのさー」
鶴)「それもそーだよなぁ」
当たり障りのない会話をしながらも、桜から目を話す事はない。
あ)「あ、満月だ！」
鶴)「ほぉ、こりゃ風流だなぁ…」
大きくて丸い満月が、空に浮かんでいた
隣には、家族でもない、ましてや人ですらない、”神様”
そんなヒトと、こんな綺麗な景色をみてることが、なんだか不思議だ
…少し前の自分に言ったら驚くだろうなぁ
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作者名：なーこ | 作成日時：2017年3月6日 17時
