五つ目、互いの名前 ページ7
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大男が指さした方向を目指し、少女は歩く。今まで名前が無かった事に疑問を感じなかったが、こうも不便だったとは思わなかった。
それから少女はAと名乗った。
Aと名乗ってから数日、またあの夢を見た。今回はしとしとと静かに雨が降っていた。
「ねぇ、わたしの名前、Aって言うの
あなたの名前はなんて言うの?」
「そうか、Aか
うん、素敵な名前だね
A、よく聞いてね
ボクは
「雨鬼?」
「そう、ボクはね
キミが持っている刀にいるんだ」
「え?」
「キミはまだまだ幼いからこれから辛い事があるだろうけど、決して忘れないで
ボクはA自身で、Aの味方だ」
「じゃあ、わたしの傍にいてくれるの?」
「そうさ、キミが刀を手放さない限りボクはキミの傍にいるよ」
Aの心がほっこりと暖かくなった気がした。大男が指差す方向に向かっていた時に何度も仲良しな親子や兄弟を見た。実際に血は繋がってはいないのは知っているがやはりそんな関係はAにとってはとても羨ましかった。
「あれ?」
降っていた雨が突然止んだ。上を向くと公園などにある小さな休憩所のような場所にいた。雨鬼はすでに椅子に座っている。
「ここはキミの心の中を表しているんだ
雨の強さでキミの感情を表し、景色はキミの思いを表す
今この世界は幸せに満ちている
キミが幸せに感じている時がボクは一番嬉しい」
「ねぇ、雨鬼
わたしはどこに向かえばいいのかな?」
「それはキミが見つけるべきだ
ボクが教えるとキミはその通りに向かってしまう
それがボクにとって悲しい」
「そっか、じゃあ見つけるね」
どこかに引っ張られる感覚がする。雨鬼は察したかのように腰を上げ、Aに近付く。すっぽりとフードを被っているので表情は見えないが口は笑みを浮かべている。
「目が覚めたら、ボクを呼んで」
Aの頬に手を添え、親指でひと撫でする。くすぐったくて気持ち良くて目を細める姿にクスリと笑い、雨鬼はAを見送る。
「決して忘れないで、ボクはキミ自身だ」
「ありがとう、雨鬼」
ゆっくりと瞼が開き、外を見ると雨が降っていた。
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yui - いいお話ですね!頑張ってください! (2019年11月28日 0時) (レス) id: a956401359 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水無月 | 作成日時:2018年11月4日 3時