第77訓 兄弟ってふとした時にうわぁこいつら血繋がってるなぁと思う ページ31
「ねぇ、総悟」
「ん?」
「ふふ」
「何ニヤニヤしてんでィきめぇ」
「もうスパダリフィーバータイム終わっちゃったかぁ」
風呂上がり、沖田の足を枕にして寝転がっていたAは暴言を吐かれたことを気にもせず嬉しそうに沖田を見上げている。
相変わらずその瞳は高級蜂蜜のように少し明るい茶色で、やはり兄の青とは似ても似つかない。
「昔はお前の目も青けりゃと思ったこともあったが、今は土方さんと違う色でよかった」
「何で?」
「そんなとこまで同じじゃもっと嫉妬しちまう」
兄に似た形の整った唇は合わせればメレンゲの様に柔らかい。
「多分兄ちゃんの唇は私のほど柔らかくないよ」
「うぇ、土方の唇とか想像しただけで吐く」
クスクスといたずらっ子の様に笑う様子に去年の秋の物憂げな影は一切ない。
「ねーねもう一回好きって言って」
「やだ」
「何でよ」
「おねだりは聞かねぇのがSってもんでィ」
「天邪鬼の間違いじゃん」
膝の上でむくれてるその顔の表情の豊かさといい、沖田からすれば土方兄妹は何もかもが違くみえるのに、時には何もかもが似ている様に思える。
特に今もさらさらと指ですいているこの髪の毛の黒はまさに自分が土方の妹であると言わんばかり。
光を浴びれば深い緑にも見える髪。
ぼーっとそんなことを考えていた沖田はAの目線に気づいた。
「総悟の方がミツバにそっくりだよ」
「俺ァあんな美人じゃねえ」
「自分は散々あの過保護シスコンに嫉妬しておいて。ミツバのことは美人だ何だ言うくせに。私のことそうやって褒めてくれないじゃん」
今度こそ本気で拗ねたAはプイと顔を背けたせいで
沖田は表情を見られずに済んだ。
思いもよらぬ可愛い嫉妬にいつもはポーカーフェイスのそれがだらしなく緩んでいる。
「姉上に勝てるわけねーだろ」
「あーあ、訂正全然似てないわ。ミツバはもっと優しいし」
今の顔をもし見られていたら全く説得力のない言葉。
沖田はそれほど惚れ込んでいるのだ。
例え酷い別れ方をしたあの日だって、見覚えのない荘厳な振袖に身を包んだAは息を呑むほどだった。
自分の元に嫁ぐのなら泣いていたかも知れないと思うくらいに。
「A、拗ねんなって。お前が言ったんだろ?兄弟は結婚できねぇって」
自分の言葉を返されて気に食わなかったのか背けていた顔をゴロリと再び沖田の方に向けて、べえと舌を出した。
その様子ですら愛おしいなんて思ってることはAには伝わらない。
「ふっ、ざまぁねぇな」
勝ち誇った様に鼻で笑う沖田の顔は違う意味で満足気だった。
第78訓 男達の社交場、大浴場→←第76訓 サウナがあれば尚良し
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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21
作成日時:2021年8月27日 20時