第61訓 人を殴る奴は人に殴られる覚悟をしないといけない ページ15
「私はさぁ、自分を善人だと思ったことなんて一度もないんだよ。
自分を正義だと思って人を斬ったことも無い。
だから今だってイラッとしたって理由だけであんたのこと斬っちゃうかもなぁ」
1ヶ月半放っておかれたとはいえAの相棒の切れ味は抜群だった。
男の首の皮は薄く裂けツーっと血が垂れる。
「お、おいやめろ警察がそんなことして良いのか!?」
「あいにく今はお宅の人質で警察じゃないんでね。
私はあんたと一緒だよ。自分の大事な人のためなら他の全てを滅ぼしても良い」
「わかった!真選組にはちゃんと出資する。お前だって俺が死んだら困るだろ!豚箱に行かれても困るよな?な??」
男の必死の命乞いがAは面白くて堪らないという様に腹を抱えて笑う。
「じゃあ、そうだな裏帳簿。それを私に渡せば警察にも突き出さないでやるよ」
「わかった案内する。それで勘弁してくれ」
胸の空く思いがAを笑顔にした。
そして、男に連れられ向かった書斎で見つけた資料で事件の全体像は明らかになる。
2年ほど前に真選組による、麻薬組織の一斉摘発で元締めだった女が今も刑務所にいる。
たしかにこの事件はAも覚えていた。
そしてその女は江戸に置いて来たこの男の内縁の妻だったのだ。
書類上はなんの関係もない赤の他人で江戸と京都ということもありこの男まで捜査の手が伸びなかった。
今回の取引もAへの仕打ちも全ては真選組への逆恨みというわけだ。
「よーし証拠もバッチリだし、行こっか」
「は?」
「ん?」
「えーと、どこに」
Aはそこら辺に転がっていた延長コードで男の手足をテキパキと縛るとその先を掴んでにっこり笑いかける。
「警察」
「おい!約束と違うじゃないか!金も入らなくなるぞ!」
男がそう喚き立てるとガツンという音がして頭のスレスレを通り本棚に刀が刺さる。
ハラハラと切れた髪の毛がAの足元に落ちた。
「あんなのただの口約束。守る方が"馬鹿"でしょ?」
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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21
作成日時:2021年8月27日 20時