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134話 飽き飽き ページ35

「いや、その、えっと…」


急に話を振られ、わたしはどもってしまった。


「何度も言うけど、わたし、ほんとに何も覚えていないの。何の記憶もない」


はぁ、そんなこと、もう2人とも分かってるよ。わたしは自分にツッコミを入れた。


「それで、自分が王馬くんのことを嫌がったかどうかも分かんない。

 その出来事は、わたしにとって、“なかったこと”になってるから。」


「まぁ、そうだよねー、ごめんごめん」


王馬くんがにやにやしながら言う。


「やっぱりこの件は誰にも解決しようがないの。

最原ちゃんも分かるでしょ?」


彼は黙り込んでいた。


仕方ないよ。


証拠も証言も何もない。


その上、相手は王馬くんで、彼だけがなんらかの情報を持っている。


最原くんは何にも納得していないようだった。


当たり前、かな。彼はちょっと悲しそうに見える。


彼はわたしの目を見た。


「東雲さん……まだ、選べない?」


あ。


なにか、その言葉がわたしの胸に刺さった。


「選ぶ……?」


わたしは2人の目を交互に見た。


王馬くんか、最原くんか……


……無理だよ、選べないってば。


わたしは、喉の奥から声を絞り出した。


「選ぶとしたら…さ、選ばなかった方とはどうなるの?」


「え?」


「例えわたしが選ばなくても、仲良くしてくれるのかな」


「それは分かんないよねー。

ま、オレは人のモノになっちゃった東雲ちゃんに興味はないけど…

いや、むしろそこから奪えるかっていうのもつまらなくなさそうだよね!」


「王馬くんからは一体どこまで逃げればいいの…」


「さあ、どうだろうね。オレが飽きるまでかな」


「あ、でも、わたし…王馬くんに飽きられると思うとすごく悲しいな。やだなぁ…」


「わ、聞いた? 最原ちゃん。かわいいこと言ってくれるじゃん!」


「……僕は?」


「ん?」


「僕が東雲さんに飽きたら…どうなの?」


「えっ……」


待って、想像がつかない。


あんなに優しい最原くんがもし、わたしに飽きたら…?


急に冷たくなっちゃったら…?


「む、無理無理! そんな、ショックすぎるよ」


わたしに飽きた最原くんなんて、見たくない。


「絶対やだ、ねぇ最原くん、飽きないでね?」


わたしは懇願するように言った。


彼はそのとき、計算してたかのように、微笑んでいた。

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めっし(プロフ) - 下に同じくです (2022年7月26日 17時) (レス) @page6 id: 7d569bbc99 (このIDを非表示/違反報告)
夢海 - 2022になっても見てますw (2022年7月4日 21時) (レス) @page50 id: 9fa1b4957f (このIDを非表示/違反報告)
みゅー@作者 - おことさん» ありがとうございます! かなり遅くなりました。王馬派さんもいてよかったです! これからもよろしくお願いします。 (2018年12月29日 1時) (レス) id: 41d434a4ee (このIDを非表示/違反報告)
おこと(プロフ) - まだ見てます!応援してます!ちなみに私は王馬派ですw (2018年12月1日 17時) (レス) id: 3db9c5d0dd (このIDを非表示/違反報告)
みゅー@作者 - 続編製作決定! そろそろ完結させなくちゃ……。まだ見てくれてる人いるのかな笑 (2018年12月1日 0時) (レス) id: 316ac960fe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みゅー | 作成日時:2017年12月4日 14時

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