広い世界を、俺が。【瀬名泉】 (ページ6)

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Aside

『あ、瀬名くん!今日早いね!』

「あー...学校が終わるの、ちょっと早かったからねぇ」

自主練中に少し話しただけだけど、意外と瀬名くんが親しみやすくて優しい人だって、だんだんわかってきた気がする

あれから約ニ週間。普通に挨拶も交わすし、ちょっとしたおしゃべりだってするようなった。

語尾を伸ばすねちっこい喋り方が、初めのうちは気になったけど、今はもう慣れたし

それが瀬名くんだから、って。思えるようにもなった。

「それではこの前の続きから–––––」

バレエだって、彼の方が私より全然上手だし、参考になる。

男の子とは少し違うけど、お手本にして踊ることも多い

モデルさんだからか、やっぱり綺麗な顔をしてて。

踊っている時も、本当に様になってる

(綺麗だなあ...)

モデル。芸能人。

そんなすごい人と、私は話せてるんだ

名前、呼んでもらったこと結構あるよね...?

(う、わああ)

あれ

『っ...!』

なんか

「ちょ、あんた転––––––!!」

急に

『うっ!?...いった...』

意識––––––––––

(...!)

10年間、バレエのこと以外、頭になかった。

それだけを考えて、生きてきた

「はあ...ちょっとぉ、大丈夫...?」

他のことに気をとられて転ぶなんて、初めてで。

『ごめ...ありがとう、っ』

なんだろう

(早い、早すぎるよ私...!!)

たった二週間で落ちるなんて

そんなの絶対ありえない

『っすみません!止めてしまって...!!』

けど

"綺麗な顔"

(ああ、ばか!)

意識し始めた途端

(止まんないよ...)

なんなの

絶対、絶対ありえない

これは、尊敬。憧れ、ただの。

『っ再開お願いします!』

大きな声で、そう叫んで

紛らわしい、私の中の私を黙らせた。