広い世界を、俺が。【瀬名泉】 (ページ3)

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『ごめん!その...あなたのこと知らなくて...失礼なこと言って!えと、それで...ファン、とは?』

「本当になんにも知らないんだねぇ...はぁ、まあいいよ、教えてあげる。俺、モデルやってんの。結構人気なんだからねぇ?女の子向けの雑誌とか、載ってるの多いはずだけど、わかんない?」

『ご、ごめ...全然そういうのわからないんだ、私...』

申し訳なさそうにするそいつ。...じゃなくて

「どこまで俺のこと知ってるのかわかんないし、面倒だから名前から言うけど、俺は瀬名泉。あんたは」

なんでこんな女に名前聞いてんの

自分でもわからない。

話しちゃったし、このまま何もなかったことに...とはできないし

『AA。えーと...他には何もない...かな笑』

モデルという俺の肩書きを聞いて、自分にも心当たるものを探したが見つからなかったのだろう。
何もない、と遠慮がちに微笑んだ。

『すごいね、瀬名くん、モデルさんなんだ...!へえー...素敵だね!』

素敵、と褒めるA
きらきら目を輝かせて。
よく見たら、翡翠色のそれは幾重に重なったガラスのよう
枝毛一本なさそうな、銀色の髪
近くで見て、初めて気付いた

(–––––そこそこいい顔してるじゃん)

普通に、可愛いんじゃないの。

こういう子なら、ファッション誌とか読んでそうだけどね

––––––そんな見た目の反面、もうひとつ気付いたこと。

...こいつの鞄、ものすごい地味。

他の奴らは色々ついてたりするのに、Aのは布製の無地の大きな鞄
キーホルダーひとつついてない。

「...あんた、もっと女の子らしいものとかないわけぇ?レッスン以外、何かないの?」

『...』

何気なく思ったことを聞くと、Aは一瞬黙って。

「っ、ちょっと、そんな顔しないでよねぇ?...別に深い意味はないんだけどぉ...?」

聞いてはいけないことだったのかと、少し焦った。

けど、そのすぐ後に、こいつは

『私...バレエ以外のこと、やったことないんだ』

また、控えめに笑って

そう答えた。