広い世界を、俺が。【瀬名泉】 (ページ1)

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『せーの、1 and 2 and 3 and 4 and...』

レッスンが終わっても、帰る気配のない、一人の女。

名前は知らない。

先生が呼んでたっけ...まあどうでもいいけど。

ここは小さなバレエ教室で、別に有名なところじゃない。
モデルやってて、あんまり目立つわけにはいかないので、ここを選んだ。

そもそもバレエを始めたのは、4歳の頃。

普通じゃ少し遅いけど、素質はあった

だから、今まで結構コンクールとか出たことあるし、失敗だって多くはなかった。

俺がいるのは、この教室で一番レベルの高いクラス

レッスンについていけてる自信はあったし、その中でも上手い方だ。

一番優秀なクラスなだけあって、他の奴らも上手いのばかり。
柔軟を見ただけでわかる、できる奴らだって。

けど、唯一欠けたもの。

–––––それは、やる気。

レッスンこそ真面目に受けているものの、その終了後の光景は、最早やる気のやの字も感じないほど。

先生から受けた注意を直そうとしないまま帰る。
レッスン後の会話で今日のことを振り返ろうともしない。
傷みやすいトウシューズをほったらかす。

正直、ここまでくると嫌になる。

そんな奴らと、話す義理もないし、話したくもないから、友達なんていない。
作らない。

...そんな、ちょ～うざぁい奴らしかいないこのクラスに今日上がってきたこの女

『いち、に、さん、し、』

ひと通り踊り終えた後に、柔軟。

一人残って、練習をして

気合いはいってんのかなぁ

うちのクラスが優秀揃いだから。

...安心しなよねぇ

皆、努力なんかしてないし
そんな、見かけだけの練習いらないから

所詮、三日坊主の悪足掻き

イライラするから、さっさと帰んな芋女。