灰崎くんと義足ちゃん Part2

94 ページ44

貴「………ん」


………なんか、夢…見てた気がする

ついでに祥吾もいた…ような……

きっと寝る前に電話したからだろうな

…でも、嬉しかった


貴「けほっ………げほ、…はぁ、は…」


薬飲んで寝たから結構治った気がする

具合は悪いけど、さっきよりマシか

えーと……今、は…

もう夜か…

お母さんは帰って……きて、るか…

……でも腹減った

あんまり…顔合わせたくないなぁ

私はそーっと階段を下りてリビングを覗く

…あ、お母さんいない

トイレかな

いいや、今のうちに何か貰って部屋にこもろう

私はキッチンに入り、何か手頃な物がないか探す

…あ、これでいいか


「……A？」

貴「あっ…お、お母さん…」


帰ろう、と思ったらお母さんと鉢合わせになってしまった

………早く部屋に行こう


貴「ご、ごめん、部屋行くね」

「…待ちなさい」

貴「え、」


腕を掴まれ、振り向いたところを張り手された

パンッと乾いた音がしてじわじわ熱を持つ頬

その一瞬で思い出し、身体が震える


貴「……っ」

「私の邪魔して、楽しい？」

貴「邪魔…してるわけじゃ」

「そんなの信じられるわけないじゃない。お父さんもあの人もいなくなったわ」

貴「で、も、あれはあの人が悪いから」

「自分は悪くないって逃げるの？他人に全部責任押し付けて？最悪、なんなのよ、私何かした？」

貴「ち、違う…お母さん」

「お母さんだなんて呼ばないで‼だから…だから産みたくなかったのよ‼」

貴「っ、ぅ、痛い…ッ」


……ああ、お母さん酒飲んでたんだ

だからだな……

大丈夫、これなら別に痛くない


「身体は弱いし、足は無くなるし…！うちにお金なんてないのよ⁈アンタの入院費とかどっから出てきてると思ってるの⁈」

貴「……ごめん、なさい、お母さんが働いてくれるから…」

「そうよ‼身を粉にして働いてるの！それなのに、それなのに再婚してもすぐ離婚…アンタのせいで……！私の幸せを邪魔しないで‼」

貴「ぐ、っ」


ドンッと押され、私は背中から激突した

その衝撃で置いてあった包丁が落ちてきて、私の腕を掠める

斜めに傷がついて、血が滴った


貴「ごめん、お母さん、もう…邪魔、しないから…ゆるして…」

「アンタなんて……産まなきゃよかった…」


お母さんは泣きながらその場に崩れ落ちた

私は居た堪れなくなり、移動する

……腕、痛い…

包帯とガーゼ、何処にやったかな

95→←93

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す