36話 ページ36
松明ができ、やっとバルサに追い付いたころには、
ニュンガ・ロ・イムの卵は生まれでて、バルサはラルンガと戦っていた。
松明をラルンガに押しつけても、ナユグとサグをじざいに行き来できるので、
消えたと思うと、ふいに現れて襲いかかってくる。
「後ろ！！」
ナユグを自由にみることのできるフィアの注意でタンダたちは大きな怪我はしていないが、
この間にも、ラルンガはチャグムと卵を狙ってくる。
タンダはこちらへ走ってくるチャグムの姿と、それを追って現れた爪を見た。
そんなおそろしい瞬間だというのに、タンダの意識は妙にはっきりと、
かんだかい鳥の声をとらえていた。ラルンガの爪の上空を、鳥の群れが渡ってくる。
カーオ、カーオと鳴きかわすその声を聞いたとたん、タンダの頭のなかで光がはじけた。
(ナージ、……
ヤクーの村境にさがる、魔除けのナージの骨。
その翼には魔物もおいつけぬという、夏至祭りの歌……。
何をすべきかが、ふいにはっきりとわかった。
「ナージ、……ナージだ！チャグム！卵を
ラルンガの触手がチャグムにせまってきた。一本の触手がチャグムの右腕に巻きつき、
食われる、と思ったそのとき、タンダの大きな手が卵をもぎとって、天へなげあげた。
けれど、あまりにすばやく風をきって消えた卵の匂いを追うことができなかったために、
ラルンガの食欲は、卵の匂いを濃厚に残しているチャグムに集中してしまった。
タンダはチャグムの胴を右手でかかえ、左手で松明を触手におしつけた。
が、松明ははじきとばされ、触手につりあげられて、ふたりは、ぐんぐん地面から遠ざかっていく。
「チャグム！タンダ！」
バルサはふたりをつりあげている四本の触手めがけて、短槍をくりだし、さしつらぬきはじめた。
バルサは急に足元の地面がふくらみ、もちあがっていくのを感じた。
次の瞬間、土くれをふきあげながら、ぬめぬめとした巨大な生き物のからだが出現した。
ラルンガの口にタンダの足が入りかけている。
バルサははねあがり、からだをゆみなりにしなわせて短槍を投げ、
投げた反動を使って、間髪をいれず松明をも投げた。松明が短槍をおって矢のように飛んでいく。
触手が短槍をはじいた。その瞬間にできた隙間を、松明がすり抜けた。
ジュウッといやな音がした。声のないさけびをあげ、
ラルンガはチャグムとタンダを宙へほうりあげ、つぎの瞬間、きえうせた。
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サヤノ - 清少ナゴンさん» 初めまして、サヤノと申します、精霊の守り人シリーズが大好きです、故あって愛読しております、タンダ特製山菜鍋も美味しいくらい想像が膨らみます、よろしくお願いします。 (9月29日 11時) (
レス) id: 8a917fb5a5 (このIDを非表示/違反報告)
真顔君 - 頑張って下さい！ (2018年8月6日 15時) (レス) id: 121ee4e48d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゴンナゴン | 作成日時：2017年12月19日 19時
