443 ページ43
「やっと
見せてあげられた」
穏やかな笑みを浮かべ、日輪は渇いた肌を撫でた。
幼い子の戯言。いいや、日輪はずっと願っていた。
どこまでも続く広大な青空を。辺りを照らし私達の心身を暖めて潤してくれる太陽を。
ずっと願っていた。
喧嘩ばかりしている鳳仙と太陽を、いつの日か仲直りさせると。
「私……ずっと知っていたのよ」
初めて鳳仙を見た日、太陽から身を隠し、どこか一人ぼっちの貴方を感じた。
沢山の人の前で、エバりくさっても、酷いことをし続けても、貴方は夜王なんて大層な物じゃないことくらい。
柔らかな掌が鳳仙の頭を撫でる。
「こうして日向で居眠りしたかっただけの」
普通のおじいちゃん。
心地よかった。その言葉を耳にした瞬間、心が潤ったような気がした。
ありきたりな言葉だけど、きっと言葉に出来なった名称。
その言葉に辿り着くまで、馬鹿げた街を創り、皆を閉じ込め敵に回した。
穏やかな声は微かに震えていた。
「……馬鹿な人」
太陽に綺麗な雫が溢れた。
頬を辿って、ヒビだらけの肌に一つ、二つと落ちた。
全身に光を浴びることが出来た。言葉にし難い美しい物だった。
鳳仙はその光に向かって歩み始める。
表情は本当に穏やかで、浮かんだ笑みは優しいもので、どこにでもいるおじいちゃんのようだった。
「本当に______馬鹿な
_______太陽に見送られ、鳳仙は逝った。
日輪はそっと亡骸を撫でた。
ぱちぱちぱち。
特有の静けさの中に拍手が鳴り響いた。
「よ、お見事」
鳳仙の死を悲しむこともなく、唯々感心と心が弾むような声で男は口を開いた。
予想外だったからだ。
人間という小さな灯が集まり、夜王と呼ばれた男に勝ち、鎖を千切った。
そして常夜の闇に太陽まで登ってしまった。
「ほんと、遠くまで来たかいがあったな」
銀時は神威の顔を見た。
玩具を前にした子供のようだと思った。
「だけど、吉原にふりかかる闇は夜王だけじゃない。その闇を全て払えると思っているのかい。
本当にこの吉原を変えられると思っているのかい」
「変わるさ」
銀時は神威の言葉に間髪入れずに言い放った。
人が変われば街も変わる。
たった一つの灯が、銀時の周りに立ち、大きな火になった。女達は自らの意思で立ち向かった。
その火が簡単に消えることはない。
「こいつらの
236人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月見ソウ(プロフ) - 萩月さん» 萩月さん、コメントありがとうございます!遅れてしまってすみません。一気に読んでくださったこと、可愛いと感じてもらえてとても嬉しいです。これからもよろしくお願いします。 (1月13日 6時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
萩月(プロフ) - 面白くて一気に読んじゃいました、不器用ながらも喜杏ちゃんを可愛がる銀さんや甘えたな年頃の喜杏ちゃん等、ニヤケが止まりません!続きを楽しみにしてます。年明け早々色々ありましたが作者さんも無理せず頑張ってください、これからも応援しております。 (1月3日 15時) (レス) id: 18ce4c7edf (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - 蛙好きさん» 蛙好きさん、コメントありがとうございます!一気に見てくれたんですか!?嬉しいです、ありがとうございます。一月下旬当たりにここに戻りたいと思ってるので、申し訳ないですがもう少しお待ちください。これからもよろしくお願いします。 (12月26日 16時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
蛙好き(プロフ) - 夜中一気に見ちゃいました、続き楽しみにしています (12月23日 2時) (レス) @page46 id: 7bb3646af7 (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - 甚嘉さん» 甚嘉さん、コメントありがとうございます!成長は特に意識して買いてるので感じてもらえて凄く嬉しいです。少し更新速度落ちてますが、頑張ります!よろしくおねがいします。 (9月25日 23時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月見ソウ | 作成日時:2023年9月4日 0時