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「銀さん」
真選組の茶番に一息つく中、新八は持っていた木刀を握り締めた。
僕はシスコンと呼ばれてもいいと思うくらい、姉上が大好きだ。
だから離れることも心底嫌だと思える。
両親が亡くなってから女手一つで自分を育ててくれた。弱いところなんて自分には見せない。強くあり続けてくれた。
出来ることならこの先もずっと一緒にいたい。
それでも、姉上が心底惚れて連れてきた相手ならそれが
万年金欠の胡散臭い男でも、
ゴリラのストーカーでも、
マヨラーでも、
ドSでも、
マダオでも、
痔でも。
姉上が幸せになれるなら、あの笑顔が浮かび続けるなら誰だって構わない。
送り出す覚悟はもう出来ている。
泣きながら赤飯炊く覚悟はもう出来ている。
男なら泣くなと言うけれど、仕方ないでしょう。大好きな姉上が自分から離れてしまうんだから。
でも____。
「泣いてる姉上を見送るなんてマネは
真っ平御免こうむります」
ぐずっと鼻を啜る新八は喜杏達に背を向けていても泣いているのがわかる。
新八が弱いことくらい知っている。しかし、それは技能だ。技能はこれから習得できる。
心はとても強い。いざという時は震えた足を叩き、立ち上がり敵と向かい合う。
「僕は姉上にはいつも笑っていて欲しいんです。
それが、姉弟でしょ」
スっと新八の視界に三つの背中が写った。
銀色の侍とチャイナと黒。
目の縁から出ていた涙が止まった。
「銀ちゃん。アネゴがほんとにあのチビ助に惚れてたらどうするネ。私達完全に悪役アル」
「略奪するような、ものだもんね」
「悪役にゃ慣れてるだろ
人の邪魔をするのもな」
いつも見てきた背中がまた明確に写った。
涙や小雨でぼやけているはずなのに。
「新八、覚えとけよ。
俺達ゃ正義の味方でもてめぇの姉ちゃんの味方でもねぇ」
銀時は腰に差している洞爺湖を、神楽は傘の柄を、喜杏は懐刀を再びに握りしめ、口を揃えた。
「「てめぇの味方だ」」
ただそれだけだ。
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月見ソウ(プロフ) - 真代さん» 真代さんお久しぶりです!祝ってくださってありがとうございます。柳生篇はギャグも多いのに考えさせられるお話ですよね。それを表現出来てるか不安ですが、楽しんで貰えたら嬉しいです。応援ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。 (2021年5月6日 12時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
真代(プロフ) - ください! (2021年5月6日 3時) (レス) id: edcb4d77ca (このIDを非表示/違反報告)
真代(プロフ) - 「貴方の傍に」シリーズ、一周年おめでとうございます!!物語は現在、柳生篇ですね。守りたいもの、取り返したいもののために、強敵と戦う話ですが、この戦いを通して、どう変わっていくのか、また、主人公はどうなっていくのか、楽しみにしてます。連載頑張って (2021年5月6日 3時) (レス) id: edcb4d77ca (このIDを非表示/違反報告)
月見ソウ(プロフ) - みうしさん» コメントありがとうございます!1年も書いときながらまだ4巻なんで、申し訳ないです。嬉しく思ってくれること、本当にありがとうございます。今のうちに話を更新していきたいと思ってますのでよろしくお願いします。 (2021年4月28日 17時) (レス) id: 5772551842 (このIDを非表示/違反報告)
みうし(プロフ) - 一周年おめでとうございます!一年間も書き続けてくださっている月見ソウ様には感謝の気持ちでいっぱいです。この作品が更新される度に嬉しくなっています…wこれからの話の展開も楽しみです。更新陰ながら応援しております! (2021年4月28日 0時) (レス) id: f1ae5cae79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月見ソウ | 作成日時:2020年12月11日 23時