第拾壱話「恋柱と少女と」 ページ14
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『美味しい〜!!』
今日は、Aちゃんと甘味処に来ていた。餡蜜を食べながら頬を緩ませている彼女にキュンキュンしっぱなし。
「喜んでもらえて良かったわ!Aちゃんと甘味処に来るの久しぶりよね!」
『ここ最近、鬼が増えてきてお互い大変でしたからね』
笑ったAちゃんの顔には珍しく疲れが見えていた。確かに、最近は鬼が活発化してきている。
(やっととれた非番だもの!今日は、Aちゃんのことを沢山知る日にするのよ!)
Aちゃんと出会ってから、半年。私が彼女について知っていることは少ない。もっと、知りたいと思ったのが今日の目的。
「Aちゃんは好きな人いるかしら?」
『そうですね……鬼殺隊の皆さんです』
照れくさそうに笑うAちゃんは最高に可愛いくて、キュンっと胸が高鳴る。
「Aちゃんの呼吸は、自分で編み出したの?」
『いえ。人に教えてもらいました』
Aちゃんが使う罪の呼吸は他の人と全然違う。お館様が言うには、どの呼吸の派生でもなく人と人の間で自然と生まれたものらしい。
「Aちゃんにも師範がいるのね!どんな方なの?」
『……優しくてとても強い人です』
よっぽど、その人のことを尊敬しているのだろう。普段とはまた別の、柔らかい雰囲気が彼女から流れた。
「とても素敵な人なのね!会ってみたいわ!ねぇ、その人は今何を」
『今日は沢山質問しますね、蜜璃さん。どうかしたんですか?』
Aちゃんの雰囲気に聞いて欲しくないことなのだと悟った。笑顔を浮かべてはいるものの、私の言葉を遮ったから。
言葉が詰まる。知りたいという欲が強すぎて、焦ってしまったみたいだ。でも、こんな時しか聞けない。
「私、Aちゃんについて知らない事が多いから……知りたいの」
彼女はいつだって優しい。笑顔を見るだけで元気になるし、声を聞くだけで嬉しくなる。でも、
『私のことなんて知らない方が良いですよ』
「どうして?」
決して心には踏み込ませてはくれない。触れたと思うと、直ぐに煙に巻いて遠のいてしまう。Aちゃんの傍は暖かくて安心するのに……時折、酷く寂しくなる。
『蜜璃さん達に、嫌われたくないんです』
Aちゃんは真顔でそう言うものだから、悲しくなる。
「私は何があってもAちゃんが大好きよ」
精一杯、私の気持ちを込めた言葉にAちゃんの顔が辛そうに歪んだ。ーー泣き顔さえ、見せてくれないのね。
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白猫さん(プロフ) - 泣きました。泣きました。 (2021年10月10日 20時) (レス) @page39 id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - あと、今更なんですが、1話の「宇隨」ではなく宇髄だと思います! (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
おもち - はじめまして!お話面白かったです!更新頑張ってください! (2020年9月27日 14時) (レス) id: 9b97fff7dc (このIDを非表示/違反報告)
ちょこもち(プロフ) - mustardさん» コメントありがとうございます。最後の話は私自身、悩み悩んで書いていた部分なのでそう言って貰えると嬉しいです!夢主にも鬼滅キャラにも今世では幸せになってほしいです…楽しんでもらえて、良かったです^^ (2020年4月14日 22時) (レス) id: cb630583b4 (このIDを非表示/違反報告)
mustard(プロフ) - わぁ!完結おめでとうございます!!とても面白く読ませて頂きました。夢主ちゃんが最後に皆に会いにいく所で涙が出そうになってしまいました(笑)今世で幸せになって欲しいです。 (2020年4月14日 20時) (レス) id: e36ed0dc7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちょこもち | 作成日時:2020年3月18日 17時