検索窓
今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:19,835 hit

暗闇,038 ページ39






「会長さま。……会長さま、ここを開けてください」



「誰じゃ。我輩を『会長さま』などと、おちょくるのは……」と零は寝惚けた眼をくるくると2周ほど搔きまわす。



手が塞がっているのか、部屋にも入ってこないのだから。零は自分からその状況を確認することを億劫に感じて、深いため息をついた。「ま〜た、このお転婆娘は……。」



「なんじゃ。まずは落ち着いてくれんと___」



「……っ、」



零の目の前には、目を真っ赤にして誰かを抱きしめる彼女がいた。綺麗な黒髪を持っているな、と冷静に分析しようとしていたけれど。



「……り、凛月っ?」



「これは、かえします。ゆっくり寝かせてあげてください。わたしはすこし……頭をひやしますから。」



いつか見た、あの顔。『ショー』の終焉で見せられた、哀愁を感じさせるような強烈な表情だ。あまりに落ち込む様子だったので、声もかけられなかったみたい。



「うぅむ。また暴走しおって……カッとなって我を忘れるなど、あやつは赤ん坊か何かかいのう?」



くくくっと、案外楽しそうだ。やったことは重いけれど、終わってしまったことは仕方ない。そんな甘々でいいのか心配だけど、零はその信念の下(もと)彼女を見守っているのだ。



「凛月や、あやつのことじゃから……どうか大目に見てやってほしい。あやつもあやつで、色々と苦労を重ねてきたんじゃ。」



「フフ、そう考えたら簡易なものじゃろ?我輩たちは一人で生きていけるが、人っ子のあやつはそうでないんじゃ。」



「Aも乱暴じゃの〜、見てみい……可哀想にうんうん唸っておるではないか。まったく、たった一人の弟なんじゃから大切にしてほしいものじゃよ」




自分の棺桶の蓋を片足で開け、凛月を寝かした。よっぽど頸動脈付近が痛いのか、どれだけ頭を撫でようと、すんすんと匂いを嗅いだりしようと、起きやしなかった。ただ、「う。うう。首が、あう〜……。」と唸るだけ。

暗闇,039→←暗闇,037



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (28 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
60人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

日向サク(プロフ) - ありがとう〜 (2017年12月14日 18時) (レス) id: 7c85688fc0 (このIDを非表示/違反報告)
しょーり - サイコー!! 大好き!! キュンキュン!! (2017年12月14日 18時) (レス) id: d8a6f4a6f4 (このIDを非表示/違反報告)
亜純(プロフ) - とってもいいです!!最高です!!応援しています!更新頑張って下さい! (2017年10月17日 1時) (レス) id: f65f9d6e58 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:日向サク | 作成日時:2017年9月16日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。