暗闇,038 ページ39
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「会長さま。……会長さま、ここを開けてください」
「誰じゃ。我輩を『会長さま』などと、おちょくるのは……」と零は寝惚けた眼をくるくると2周ほど搔きまわす。
手が塞がっているのか、部屋にも入ってこないのだから。零は自分からその状況を確認することを億劫に感じて、深いため息をついた。「ま〜た、このお転婆娘は……。」
「なんじゃ。まずは落ち着いてくれんと___」
「……っ、」
零の目の前には、目を真っ赤にして誰かを抱きしめる彼女がいた。綺麗な黒髪を持っているな、と冷静に分析しようとしていたけれど。
「……り、凛月っ?」
「これは、かえします。ゆっくり寝かせてあげてください。わたしはすこし……頭をひやしますから。」
いつか見た、あの顔。『ショー』の終焉で見せられた、哀愁を感じさせるような強烈な表情だ。あまりに落ち込む様子だったので、声もかけられなかったみたい。
「うぅむ。また暴走しおって……カッとなって我を忘れるなど、あやつは赤ん坊か何かかいのう?」
くくくっと、案外楽しそうだ。やったことは重いけれど、終わってしまったことは仕方ない。そんな甘々でいいのか心配だけど、零はその信念の下(もと)彼女を見守っているのだ。
「凛月や、あやつのことじゃから……どうか大目に見てやってほしい。あやつもあやつで、色々と苦労を重ねてきたんじゃ。」
「フフ、そう考えたら簡易なものじゃろ?我輩たちは一人で生きていけるが、人っ子のあやつはそうでないんじゃ。」
「Aも乱暴じゃの〜、見てみい……可哀想にうんうん唸っておるではないか。まったく、たった一人の弟なんじゃから大切にしてほしいものじゃよ」
自分の棺桶の蓋を片足で開け、凛月を寝かした。よっぽど頸動脈付近が痛いのか、どれだけ頭を撫でようと、すんすんと匂いを嗅いだりしようと、起きやしなかった。ただ、「う。うう。首が、あう〜……。」と唸るだけ。
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日向サク(プロフ) - ありがとう〜 (2017年12月14日 18時) (レス) id: 7c85688fc0 (このIDを非表示/違反報告)
しょーり - サイコー!! 大好き!! キュンキュン!! (2017年12月14日 18時) (レス) id: d8a6f4a6f4 (このIDを非表示/違反報告)
亜純(プロフ) - とってもいいです!!最高です!!応援しています!更新頑張って下さい! (2017年10月17日 1時) (レス) id: f65f9d6e58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日向サク | 作成日時:2017年9月16日 10時